HAIR ICIが名古屋から東京へ! 34歳・現役スタイリスト社長、 “名古屋飛ばし”をさせない、強い組織作りへの挑戦
名古屋の人気エリアを中心に、現在5店舗を展開するHAIR ICI(ヘアー アイス)。今年4月に、創業者・朝居 達雄(あさい たつお)さんが社長を退いて会長となり、スタイリストと幹部を兼ねていた丹羽 健太(にわ けんた)さんが社長に就任。若きボスを筆頭に、県内外のヘアショーへの参加に加え、来春東京進出を決定するなど、名古屋で最も勢いのあるサロンのひとつとなっています。
創業27年目にして東京出店を決意した理由とは? そしてICIが掲げる企業としての“ビジョン”とは? 34歳にして5店舗を束ねる現役スタイリスト兼社長、丹羽健太さんにお話を伺いました。
美容師としてのピークを早める!? “どこよりもいい労働環境”を掲げるICIの戦略
-34歳と若く、人気スタイリストでもある丹羽さんが、社長に就任した経緯を教えて下さい
「HAIR ICIとしてのこれからのビジョンに向かってどう変わっていくかと考えたときに、『自分がトップでいるよりも、若い人がサロンを運営したほうがいい』と、現会長の朝居が判断しました。朝居は50代で、まだまだ現役でいけるセンスがあるのですが、“常に時代の半歩先を捉えていく”という発想のもとで5年前から世代交代を考えていたようで、僕たち幹部に熱く想いを語ってくれました。そこで自分を含め幹部の意識が変わって、最終的に僕が社長に就任させていただきました。
僕より年上の幹部も複数いるのですが、それぞれが朝居の想いをしっかり共有し、得意分野を生かせるポジションを持ちつつ、責任感を持って仕事をしているので、変に確執が起こることもないです。すごくバランスのいい環境で社長業とスタイリストをやらせてもらっていて、この環境には本当に感謝しかありません」
-HAIR ICIとしてのこれからのビジョンとは、どういうものですか?
「どこよりもいい労働環境をつくること。そしてどこよりもいいスタイリストを育てることです。
美容師って素敵な仕事だと言われますが、やっぱり一般企業に比べるとまだまだ課題が多いと思うんです。具体的には収入面や休暇、労働時間とか…。それらを改善して、例えば結婚するときに相手の親御さんへ挨拶したときに『美容師をやっている』と言ったら、『美容師さんなら安心して送り出せます』と思ってもらえるような。それだけの価値が美容師という職業にはあると思いますし、何よりICIで働いているスタッフに『ここで美容師ができて本当に幸せだ』と感じてもらえるようになりたい。いいスタイリストをつくるためにも、労働環境は大事なことなので、どちらもバランスよく描いていきたいと考えています」
-具体的には、どのような取り組みをしているのですか?
「労働時間の面では、まずアシスタントの夜の練習をしっかりスケジューリングし、足りない分を朝に行なうようにしています。そうすることで、むやみに深夜まで練習することがなくなりますよね。そしてサロンワークの中でできる限り基礎を学んで、そこから先はモデルさんを呼んで練習をする。モデルさんを呼ぶとなるとどうしても練習が夜になりますが、なるべく時間を前倒しにして、例えば今まで23時までかかっていたことを22時までに終わらせていく。ゆくゆくは営業時間内ですべてが終わらせられるようになると理想的ですね。
さらに今、練習をさせてもらったモデルさんを、そのまま顧客として迎えるシステムを整えています。それに加えて、僕たち上の世代が若い子たちに技術や接客面などの的確なアドバイスをしてあげることで、スタイリストとしていちばん伸びる20代半ばにグッと売り上げややりがいを得られるようにしたい。
今の美容業界では、このピークがもう少しあとの20代後半〜30代前半になりがちだと思います。すると、たとえば店長になる頃には、女性だと結婚・出産を考えたりして、頑張りたいけれど不安も出てきたりすると思います。でも、20代半ばで店長を経験することで、若くして幹部になれる可能性ができますし、女性なら育休なども取りやすくなる。そして、経験があることで休んでも戻ってきやすくなる環境をつくれる思うんです」
-ほかの美容室よりもスタイリストのピークを早めるということですか?
「そうですね、そういうイメージかもしれません。若いとどうしても経験の少なさが否めないのですが、それを上の世代がフォローしながら、若手スタイリストたちの持ち味を引き出してあげる。そうすれば自信がついて、生き生きと自分の仕事ができるはず。そして、その姿をさらに下の世代に見せていくことで、次の子たちが夢を持って受け継いでいく。そういう環境が生まれたらスタッフたちは、美容師になって、ICIに入ってよかったな、と感じてくれるのではと思っているんです。
ICIとしてやりたいことがたくさんある中で、それを実現していくには、サロンワークはもちろん、組織としての強さも必要です。
会長の朝居も常にこういったことを考えていたようで。僕も社長を交代したからには、それを超える新たな形をつくっていきたい。『もっとわくわくさせろよ』と、よく会長に言われています(笑)」