世界的なクライアントを抱え、一流メディアに名前を刻むヘアメイク Teiji Utsumiがロンドン・東京で仕掛ける「Haco+」とは?
ロンドンを拠点に16年間、Burberryなどのハイブランド広告や、VOGUE USなどの一流ファッション誌にて、ヘアメイクとして成果を残してきたTeiji Utsumiさん。2020年にロンドンに立ち上げたヘアサロン「Haco」は瞬く間に人気店となり拡大移転、2023年には東京・南青山に上陸し、型破りな発想で独自のスタイルをつくる美容師が集っています。世界のヘアメイクシーンで活躍するTeiji Utsumiさんは何者なのか、今なぜ日本にサロンをオープンしたのかなど、ご本人に直撃取材しました!
ヘアメイクとして世界のファッションシーンを見たい
−世界の第一線で活躍されるTeijiさんですが、どういうきっかけで美容師からヘアメイクに転身されたんですか?
僕は奈良県出身で中学卒業後16歳から大阪に移り住み、美容室で働きながらルトーア東亜美容専門学校の通信課程で美容師免許を取りました。その後、東京の美容室でも働いています。
ヘアメイクに興味を持ち始めたのは23歳くらいのころ。ロンドンのファッション・カルチャーを体現する『i-D』という雑誌があるんですが、「こういうメディアに載る仕事がしたい」と思ったんです。コムデギャルソンやヨウジヤマモトも好きだったから、ステージのヘアの仕事にもつきたかった。それで半年間、渡辺サブロオさんのメイクスクールで学びました。当時は、今以上に海外への憧れが強い時代。UKロックが好きでしたし、ロンドンのグラフィックやアートが好きなので、行くならロンドンかなと。『i-D』もロンドン発のマガジンですし。「世界を見てみたい」という探究心だけで海を渡りました。
現地では、語学学校で勉強しながら日系の美容室で働き、渡英2年目にはロンドン芸術大学に入学。ファッションやカルチャーを幅広く学びたいし、異国の地で同じ志を持つ仲間がほしかったんです。実際、学生時代にさまざまなアーティストのたまごと出会えたことが、今の自分の財産です。今、日本で売れっ子のフォトグラファーと「ロンドン時代はすごく貧乏だったよね」と当時の話をすることも。みんな売れる前に貧乏時代を経験しているんですよ。
チャンスのある場所にとにかく足を運んだ
−ロンドン芸術大学の卒業後はどのようにキャリアを重ねていったのですか?
作品をためながらチャンスを探していたんですが、すぐに仕事をとれるわけではないんですよね。年齢的にも26歳、27歳くらいなのに仕事も収入も少なく、辛い時期でした。家賃が払えないので、身内に助けてもらったことも。家でじっとしててもチャンスは掴めないので、人と情報が集まるところにいかないとダメなんですよね。アーティストと出会えるチャンスが来たら、彼女との約束を延期してでも会いに行っていました。
当時一緒に飲んでいた仲間が、ヘアメイクとしてJames Pecis(ジェームズ・ペシス)という有名なヘアメイクが手掛けるロンドンファッションウィークのバックステージでサポートしていたんです。ある日「急遽、人が必要になったから来れるか?」と僕にも声がかかったんですよ。現場に行ってみると、夜会巻きをつくる仕事だったんですね。実は日本にいたときにキャバクラのアップスタイルをつくるアルバイトをしたことがあったので夜会巻きが得意で、実際その場にいたメンバーの中で一番上手かった。
James Pecisが「これをつくったのは誰だ?」と訪ねて、「僕です」と答えたあのときから、ヘアメイクの道が開けました。キャバクラのバイトをしていた頃はつまらないなと思っていたんですが、どんな経験が次のステップに繋がる鍵になるかはわからないものです。それがきっかけでJames Pecisのアシスタントを務めることになりました。