エザキヨシタカが美容業界に疑問を呈す。 人を大切にすることで築いた15年――gricoの歩みと未来への展望
grico15周年を経て、次のステップへ
美容業界では、よく「これが正解だ」という意見が飛び交いますが、僕は「信念がないというか中身がない人が多いな」と感じることがあります。人間みたいに見えるけど、中身が空っぽな感じというか、大切なことを見失ってしまっているような気がする。
僕が思うに、本当に大事なのは、周りにいる人たちや、関わりのある人たちを大切にすることだけです。それさえやっていれば、自分にとって一番の幸せを感じられるものなんですよ。
今後、僕たちのサロンも少しずつ変わっていくと思います。15周年を迎え、新しいステップに進もうとしています。これまではTORAなど別のブランド名で出店を進めてきましたが、今回はじめてgricoブランドでgrico NaniYo店をオープンしました。店名には自分の名前と、一緒に働きたいと言っていた娘の名前を入れています。これからも子どもたちに「一緒に働きたい」と思ってもらえるよう、美容師という職業の可能性をさらに広げ、魅力を高めていきたいと考えています。
そして、最近始めた古着の事業「grico vintage(グリコヴィンテージ)」も順調です。元々「grico clothing(グリコクロージング)」の事業は震災後に始めていて。サロンやオンラインで、セレクトした服を販売するのはもちろん、震災などで通常のサロン営業が厳しくても、別事業をすることでスタッフの生活を守りたいという全国のオーナーの声を聞いて、美容室にも服を卸してきました。スタッフを守ろうとするサロンのために、何か力になりたかったんです。
今回はいろんな人とのご縁で、古着の買い付けができるようになりました。アメリカやタイにも実際に行って、仕入れをしています。古着って、単に服として見るだけじゃなくて、その背後にあるカルチャーや歴史、アートや音楽、映画なんかを知っていると、より深い価値を感じられるんですよね。こうしたカルチャーが美容と繋がっていることを強く感じています。今の美容業界では、髪を切るだけでなく、もっと幅広い視点を持つことが求められているんじゃないですかね。
僕たちはこれからも、周りの人たちを大切にしながら、好きなことに挑戦し続けたいと思います。仕事はもちろん大切ですが、結局一番大事なのは「人を大切にする」という気持ちです。それがあるから自然に結果がついてくる。これからもその気持ちだけは絶対に忘れず、楽しく仕事をしていけたらいいなと思います。
- プロフィール
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grico/オーナー
エザキヨシタカ
2009年原宿に「grico」をオープン。美容業界を牽引する美容師。美容師の新たな在り方に対し、常にアプローチを仕掛ける。芸能人、コレクションのヘアメイク、TV出演、アパレル業、商品開発、コンサルティングなど多方面で活躍。業界を超えて多くのメディアから注目されている。
(文/外山武史 撮影/菊池麻美)