魅力的な人を育てたいから、人生まるごと引き受ける! 2年目オーナーがスタッフのためにつくった「未来設計ワークシート」とは
美容師としての成長が「人生の目的」に通じていると気づけば本気になれる
—ワークを行うことで、具体的にはどんな効果がありましたか?
ひとつには、夢は叶うものなんだということを実感できるというのがあります。
短期的な目標を一つひとつ達成していくこともそうですし、はじめに「項目リスト」を書いたときに、そのうちの1つを必ず一週間以内にやってもらうようにしているんですね。たとえば「親孝行」というようなことを書いていたら、ご両親に手紙を書くとか、食事に招待するとか。そういった簡単なものでも実現させて成功体験を得ることで、自分で考えて動けば「できる」というのをわかってもらえます。
そうするとさっき言ったように、どんどんやりたいことも出てくるし、人生の目的を考える思考や行動が生まれてきます。
一週間以内としているのは、大抵の人は何かをやりたいと思っても、期限がないとやらないから。みんな今できることすらやらないから、いつまでたっても次の段階に進めないんです。このワークは、いつまでに何をして、どんな目標を達成するかを、具体的に書くので、自分で自分を動かす人間に育っていきます。
—サロンワークにも良い影響はありますか?
自分の人生における「仕事」の位置付けがわかるので、自発的に練習をするようになりました。みんな夢を持って美容師になったはず。美容師になった先に叶えたい何かがあったはずなんです。ワークを通してそれを思い出したり、再認識できたりすると、おのずと練習の必要性もわかって、こちらが何も言わなくても本気になってくれます。
それに毎月ワークの時間に目標を達成できたか、やるべきことをちゃんとやったかを見返すことになるので、人に言われなくても自分に厳しくいられますよね。だから僕、サロンをオープンしてもうすぐ3年目になるのですが、まだ一度も怒ったことがありません。怒る必要がないんですよ。
このワークシートに取り組むことが、たぶん僕が怒る以上にスタッフへの厳しさになっているんだと思います。
—「人生」を考えることが、結果として美容師としての教育にも役立っているのですね。
本当にそうです。美容師として成長したり、仕事をがんばることが、自分の人生の目的に近づくことだとわかることで、その人の中にいい循環が生まれていくんです。
あとサロンを運営していくうえでも、このワークシートを取り入れるメリットはありました。みんなの未来設計がわかれば、サロンの将来的プランも組み立てやすくなります。特にうちは女性スタッフが多いので、みんなが何年後に結婚を意識するようになるのかとか、逆に結婚をしなかったときに第一線で仕事を続けていけるシステムをいつ頃までに整えておけばいいのかとか。もしお店を持ちたいという人がいれば、そのための準備も数年前からできますからね。
みんな若いので未来設計は変わっていくだろうし、そのときになって気持ちや状況が異なっていることもあるでしょう。僕はそれでいいと思っています。だけどどうなっても大丈夫なように、オーナーとして準備をしておける。
僕としては計画通りにいったときの幸せも、いかなかったときの幸せも、どっちも準備しておけるようになりたいと思っています。だってさっきも言ったように、ここがスタッフの夢を叶える場所でありたいですから。
- プロフィール
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Gallica
代表/中村 飛鳥(なかむら あすか)
1987年生まれ。長崎県出身。ハリウッドワールド美容専門学校卒業後、都内2店舗を経て、2015年、東京・原宿に『Gallica』をオープン。2016年11月、拡張移転。
(取材・文/福田真木子 写真/河合信幸)