58歳で美容師に!! 元営業マン藤田巌さんの「大」転職人生

お客さまのいるところに美容師が訪れるというのがこれからの美容の形

 

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-58歳で定年退職し、横浜市栄区に「株式会社福祉美容室カットクリエイト21」を開業。そして平成19年には、訪問美容サービスを専門とする「株式会社出前美容室 若蛙」を東京・用賀に作りました。“福祉美容”に特化した会社を設立した理由はなんですか?

 

そもそも美容師を目指したのは、お年寄りにカットで感動していただきたいと思ったからですので、自然な流れでした。私が普通の美容室を開業したところで、生存競争は激しいですし、新規のお客さまを取り込むのは難しいだろうという予測もありました。それなら何かに特化した美容室を作ろうと。ほかの美容師の方が行かない道をあえて行くのが、成功への道であり、美容業界にとって必要なことではないかと思い、高齢者の方とハンディキャップのある方を対象とした美容室を開業しました。

 

-印象的なお客さまはいらっしゃいますか?

 

何を尋ねても、言葉数が少なくて、こちらから一方的にお声がけをするしかなかったお客さまがいらっしゃったんです。でも、最後に「できましたよ」と鏡を渡すと、初めてニコリと笑い「よかった。明日主人に会いにいくの」とおっしゃって。お墓参りに行かれるんでしょうね。寡黙だった人が綺麗になってご主人のお話までしてくださるようになったと、感動しました。そのとき、「ああ、やっていてよかったな」と心からうれしく思いました。

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-福祉美容の需要はこれからも増え続けると思いますか?

 

はい。お客さまがいらっしゃるのにやる人がいないというのが現状です。まだまだ「美容師は店を構えてなんぼ」という考えが根強いんですね。

 

私の会社では福祉美容の一つである“訪問美容”のサービスをしています。訪問美容はその言葉の通り、病気や高齢などで外出できない方を訪問し、カットをするというもの。お店でお客さまを待つのではなく、“訪問美容”のようにこちらから足を運ぶというのが、これからの美容の形ではないでしょうか。

 

-福祉美容師を目指すにあたって、持っておいたほうがいいスキルはなんでしょうか?

 

ホームヘルパー2級です。病院によっては、資格保持者しか患者さまの体に触れられないという規定があるんです。そういうときには看護婦さんの手を煩わせてしまいますので、美容師側で持っているといいと思います。また、美容師の方は営業が苦手のようですね。「腕で勝負」という方が多くて、営業に出たがらないんです。でも、営業スキルを学んでおくと、仕事を増やすことができますし、参考になると思いますね。

 

-藤田さん自身は、現在75歳。何歳まで美容師を続けたいですか?

 

まだ75歳ですからね。手が震えたりしてお客さまにご迷惑がかからないようにしながら、あと10年は頑張りたいですね。いや、100歳まで(笑)。生涯現役でいようと思います。

 

プロフィール
出前美容室 若蛙

代表/藤田 巌(ふじた いわお)

昭和16年、東京生まれ。日本大学法学部を卒業後、富士通に入社。ブラジル駐在員、電子機器部門営業管理職などを経て、定年退職。58歳で横浜市栄区に「株式会社福祉美容室カットクリエイト21」を開業。平成19年に訪問美容サービス部門の業務移管を受け、「株式会社出前美容室 若蛙」を設立する。社員数は業務委託者39名、管理部門5人。現在、60運営会社160施設、定期利用120人のお客さまを抱える。

 

(取材・文/酒井美絵子  撮影/QJナビ編集部  写真提供/藤田巌)

 

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