わたしの上京物語-美容師として大阪から東京への挑戦-
東京は移り変わりの早い街
上京後は、環境が変わり、お店が変わり、すべてをまた一からスタートすることになります。技術面で言えば、今までの自分を見直すいい機会になったと思いますね。スタイル撮影が増えたことにより、仕上げに対する細部へのこだわりや、それを作り出す技術が求められるようになりました。
また、東京のお客さまは大阪と違い、みんな思っていることがあったとしても、言ってくれないので。接客においても、相手の考えをより察しなければいけないといった部分において、以前よりも高いクオリティを求められるようになったと思います。そういった環境に身を置くことで、自分でも成長したな、と思える部分が増えました。
なにより東京に出てきて強く感じたのは、流れの速さです。人でも物でも、とにかく東京は移り変わりのスピードがめちゃくちゃ早いですね。どんどん新しいヘアスタイルが出てくるし、お客さまが求めることも日々刻々と変化している。そのスピードについていくこともそうですが、そういった動きを肌で感じられる環境は自分の成長を促す一番の刺激になっていると思います。
また、東京のお客さまはとてもシビアな目を持っています。若い人でも美容に対する知識が豊富な子がたくさんいるし、気に入らなければ代わりの美容室はたくさんありますからね。
とはいえ、やはり生活面で言えば東京より大阪の方が物価も安く、住みやすいですよね。関西には関西の美容師さんの魅力があって、とても個性的な人が多くて面白かったです。今でも連絡を取っているので、お客さまが転勤で大阪に行くことになった…というような場合は前にいたサロンを紹介していますよ。
♦♦♦上京を考えている読者へのアドバイス♦♦♦
まず、現地の下見はとても大切だと思います。実際に見てみないと分からないことってたくさんありますからね。サロンの見学もそうだし、街全体の雰囲気を掴むのって、結局はその場所に自分が居着くわけですから、すごく重要なポイントだと思います。次に、どのサロンに入ったとしてもすべて一からのスタートだということは覚悟しておいた方がいいですね。
東京は、求められるクオリティの高さも、お客さまの目も、想像よりはるかに厳しいと思いますよ。しかし、それらを踏まえた上でも、毎日の通勤途中に新しい人や物に出会える。本当に“いいもの”を実際に自分の目で見て、知ることができて、出会える環境というのは東京ならではだからだと思います。とても厳しい環境ですが、その分刺激があって魅力的な街だと思いますよ!
上京を考えている、けれど一歩踏み出せないでいる読者のみなさま。今回のエピソードを参考に、自分なりの上京物語を始めてみてはいかがでしょうか?
- プロフィール
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CHELSEA
スタイリスト/武田 慎太郎 (たけだ しんたろう)
愛知県名古屋市の美容学校を卒業後、大阪心斎橋にあるサロンに5年間勤務。25歳の節目に上京し、現在CHELSEAでスタイリストとして活躍中。髪へのダメージを最小限にとどめるカラーやパーマを得意とする。
(文/木村 衣里)