「カットが嫌い」。美容師として致命的な弱点を克服してエースに―MINX佐々木千紘さんの働く理由
次世代のサロンリーダーを期待される若手スタリストに聞く「このサロンで働く理由」シリーズ。今回はMINX期待のスタイリスト、佐々木千紘(ささきちひろ)さんを訪ねました。
現在では、月の売上が200万円を超えるエーススタイリストの佐々木さん。しかしスタイリストデビュー直後、大きな壁にぶち当たります。「カットが嫌い」という美容師として致命的な弱点を、克服できたわけとは?
地域一番の進学校へ入学。それでも揺るぎなかった美容師への思い
よく「美容師になったきっかけは?」と聞かれるのですが、実はなぜなりたかったのか、はっきりした理由は覚えていないんです。ただ、小学校の卒業文集に「美容師かヘアメイクになる」って書いてあったんですよね。たぶん、キレイなものを見るのが好きだったので、なんとなく憧れがあったんだと思います。
初めてMINXに行ったのは専門学校1年生のときです。友だちに誘われて行ったのですが、地元の美容室との違いに驚きましたね。今までは切り抜きを持って行っても「なんか違うな」という髪型になってしまっていたのに、初めて同じになったんです。その後、他のサロンもいくつか行ってみたのですが、最初の感激が忘れられませんでした。原宿店のあの階段を降りてガラスドアを開けるときは緊張しましたが、今思うとそれが人生の新しい扉だったのかもしれません。
「カットが怖い」。200人カットしてスタイリストデビューしたはずが…
今思えば、私のアシスタント時代はとても恵まれていたと思います。つかせてもらったのが岡村と長崎(現CANAAN代表の長崎英広氏)で、2人ともサロンの顔と呼べる人。その側で学べたことは幸運でした。特に撮影などの店外の仕事では、「自分がMINXを背負っている」という気迫が漂っていて、見ていて背筋がのびる気持ちでした。
ただ私の美容師人生は、スタイリストデビューしてからが大問題。私、カットが苦手だったんです。それは「髪の毛を40度に引き出して」といった、ガチガチに基準が決まっていることに苦手意識があったから。あとアレンジは左右が非対称でも、それはそれでOKな場合がありますが、カットは左右対称に仕上げなくてはいけない。それが難しいと感じていたんです。アシスタント時代は、そんな気持ちに耐えながら切っていたためか、練習のときはカットができているけど、身についていないということも多々ありました。
もちろんMINXのデビュー基準である200人をカットして、合格点をいただいたからスタイリストになりました。ですが、カットが好きじゃないし、できないので怖いという気持ちがあり、サロンワークがとても不安だったんです。うちのお店は、私がカットしても、岡村がカットしても料金は一緒なので、その当時は同じ料金をいただいてしまっていいのだろうか、という不安もありました。
特に「ショートヘアにしたい」と言うお客さまは、わずかな長さの違いでデザインが変わりますよね。そんなときは、シャンプーしている間もずっと「どうやって切ろうかな」ってドキドキしながら考えていました。「どこのラインから前下がりにすればいいんだろう」とか、「マッシュの丸みの角度はどうやって考えたらいいんだろう」とか。そんな状態だったのでデビュー後しばらくは、お客さまになるべくカットが少なくなる提案をしたりして…、今思うとよくないですよね。
>2年間売上が上がらない状況が続いて…弱点を克服するためにしたこととは?