「5分で人を幸せにしろ」怒らない教育を受け継ぎ目指すもの―LONESS目澤沙友里さんの働く理由
次世代のサロンリーダーを期待される若手スタイリストに聞く「このサロンで働く理由」シリーズ。今回は、人気、実力ともにトップクラスの本田治彦(ほんだはるひこ)氏と片山良平(かたひらりょうへい)氏が率いるサロン「「LONESS」のスタイリスト、目澤沙友里(めざわさゆり)さんを訪ねました。前サロンで本田氏のメインアシスタントとなり、新たな教育方法を学んだと語る目澤さん。尊師を追うように前サロンから転職した目澤さんがLONESSで成し遂げたいこととは?
母を超えるには、美容師になるしかないと思った
私の母は、北海道の旭川で美容師をしていました。朝から晩まで働いている母を幼いころから見ていて、とても尊敬していたんです。美容師になろうと思ったのは、母を超えるには美容師になるしかないと思ったから。母の髪を切ってあげたり、マッサージをしてあげたり、母と同じ仕事で親孝行をしてあげたいと思いました。
美容師になるなら頑張ってトップを目指したかったので、今も昔も美容のトレンドの発信地である東京に行きたいと思っていました。母も若いころに本当は東京に行きたかったそうですが、金銭的な問題で諦めたため、私の夢を応援してくれました。最初に就職した「apish」を知ったのは、「B.C.ビューティー・コロシアム」というTV番組。それから「apishに入りたい」と思うようになり、専門学校はapishの坂巻さんがセミナーにくる札幌の学校に通いました。専門学校へ入学後、apishの入社説明会へ行き、apishのコンセプトが「親孝行」だと聞いたときは、ますます「ここに入るしかない!」と思いました。
専門学生のときは、課題をやったり、大会に出場したりとすごく忙しかったです。大会の練習が終わって、夜8時からバイトもしていました。今でもそうなのですが、ずっと働いている母の姿を見てきたので、「休むってなに?」というくらい、動いているのが当たり前だったんです。
大切なのは、お客さまの気持ちに寄り添うことだと教えてもらった
apishに入社して2年目に、代表の本田と同じ店舗に配属されました。本田は私の接客の仕方を気に入ってくれて、メインアシスタントにつかせてくれたんです。メインアシスタントは大体5〜6年目のスタッフがつくので、「こんなに早くついていいの?」と驚きました。
本田のメインアシスタントにつき、間近で本田の技術や接客を見ることで、本当にさまざまなことを学びました。人を育てるとき、怒ってできるようにさせる人もいますよね。でも本田は「その人のいいところだけ、伸ばせばいい。そうしていくことで自然に苦手なところも伸びていく」という考え方なんです。私は、接客が得意だとは思っていましたが、先輩たちにかわいがってもらえるような言動ができず、それが悩みの種でした。しかし、それに対しても本田は「それならそれでいいじゃん」と言ってくれたんです。そうやって、私も私以外のアシスタントも、本田にそれぞれのいいところを伸ばしてもらえました。おかげで、その時代はすごく楽しかったです。
また、お客さまは1回の来店で大体2時間〜3時間ほどサロンに滞在されるのですが、その時間でどうしても心を開いてくださらない方もいます。私が心がけていたのは、そういう人たちが心を開いてくださるような接客でした。でもある日、本田に「それができるのはわかった。でも、沙友里くらいになったら、5分で人を幸せにしろ」って言われたんです。何時間も一緒にいて心を開かせるのは誰でもできるけど、もっと上を目指すんだったら、挨拶から最初の5分間で心を開かせて、その人を幸せにしないといけない、と。それをきっかけに、大切なのはやたらと話しかけることではなく、お客さまに対する“気遣い”だとわかりました。おしゃべりをしたくない人もいるし、疲れていて癒されたいお客さまもいます。むやみに話しかけるのではなく、心に寄り添えば心を開いてくれるんだと感じたんです。