びよう道 vol.9 AFLOAT CEO 宮村 浩気さん 〜お客さまも、技術も全部リセットして、自分のデザインを探した〜
美容室でも待遇や休日が大切と言われる時代。もちろんそれも大切ですが、美容人生のどこかでは“心も体も美容でいっぱい”という時期があってもよいかもしれません。
「びよう道(みち)」は、そんな地道で壮大な鍛錬の道を歩んできた“美容の哲人”に、修業時代に一人前になったと思った瞬間や美容の哲学など、それぞれの美容の道を語っていただく連載企画です。
第9回目は、AFLOAT CEO 宮村 浩気さんに、カリスマと呼ばれる以前の時代に、いかにして表現力を高めてきたのかを伺いました。
技術を見直すために、今いるお客さまを手放してもいいとさえ思った
僕が以前勤めていたディメンションでスタイリストになったばかりの頃は、今から振りかえるとへたくそすぎて話にならないレベルでした。リピーターもすごく少ないし、トークが巧いわけでもない、薄っぺらい美容師でしたね。あるとき、こう思ったんです。「やっぱり大事なのは技術なんじゃないか。“この人に切ってほしい”と思われる自分になっていかなきゃダメだ」って。
それで、自分の中で1回、全てをリセットしたんです。今までのお客さまも一旦全部、手放してもいいかなみたいな。もう一度、自分の技術からなにから見直していこうと。それから3年くらいは、自分の好きなデザインを模索しながら、試行錯誤をしていましたね。
そもそも僕は、「正確に切ること」にこだわるタイプではありませんでした。技術的に正しく切るよりも、仕上がったときの全体の雰囲気が大事だと思っていたんですよね。もっとやわらかいデザインがしたいので、新しい切り方を自分で考えたりしていたんですよ。ストロークカットのようにシザーを滑らせながら切ったら切り口がどうなるのかなぁとか。
切るというより、“削る”感覚のほうが好きなデザインに近づけることができるとわかり、いろいろと試していました。お手本もなにもないから、自分でやるしかない。お客さまに協力していただくこともありました。
そうして、どんどん自分流の技術が身についていくと、お客さまも増えていきました。雑誌撮影の仕事も増えて、朝6時から撮影してから営業、多いときには50人くらいカットするような怒涛の日々がスタート。お客さまが50人いたら50通りデザインを考えるから頭が鍛えられましたし、施術のスピードも売上げも上がりました。自分も活躍している人たちの仲間入りができたかな、と思えるようになったのはそのころからですね。
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