びよう道 vol.5  BEAUTRIUM川畑タケルさん 〜脳は難しいことが好物。難しいカットを何度も何度も繰り返すと、DNAに落ちていく〜

僕のカットは誰かに習ったものじゃない

 

 

雑誌をやっていたころは、その時代のアイコンのような人たちの髪をたくさんつくっていました。だから、頭の中には、いつも新しいヘアデザインがありましたね。ヘアデザインって、なんとなく考えたくらいで出てくるものじゃないんですよ。お客さんの髪をやりながら、ふっと「これなのかな」と思えるものがポンと出てくる。そして、「こういう髪を発表できるチャンスがないかな~」って考えているときに、不思議とぴったりの人が現れたりするんだよね。

 

僕のつくる髪は、突拍子もないヘアデザインじゃないんです。トラディショナルだけれど、エレガント。普通といえば普通なんだけど、「これかわいいよね」と思ってもらえるような、ちょっと難しいところを攻めているつもりです。だから、かわいいんだけれど、何がよくてかわいいのかはわかりにくいかもしれないね。

 

 

つくりたいヘアデザインの原点は、子どものころの経験にあります。物心ついたころから映画が好きで、欧米人の髪型をよく見ていました。めちゃくちゃ観察する子どもだったから、疑問に思うこともたくさんあったわけ。映画に出てくる欧米人と、日本人の骨格や髪質が全然違うことにも気づいていたんですよね。ちなみに、幼稚園のころはバレリーナの脚が好きだったんで、じーっと見ていましたね。好きな女の子を見すぎて「ジロジロ見ないで!」って怒られたこともあった(笑)。そんな子どもだったんですよ。

 

つくりたいイメージを実現するためにカットを覚えた

 

 

僕は常々、外国に行っても、日本人は美しいと思ってもらえるようなスタイルを作りたいと思っていました。やりたいイメージは明確にあるんだけれど、切り方がわからなかったんです。とにかく、そのカタチに近づくように切っていくしかない。技術云々じゃなく、手探りでやってきたから、僕のカットは独自なんですよ。

 

たとえば、髪を軽くして動きを出す「スライドカット」は僕が考案したものです。「スライドカット」は注目されましたが、でも僕はそれよりも日本人の女性の骨格を考慮して、素敵に見えるように整えることが得意。骨格に合わせて中に段を入れていくっていうのは、外からは見えない作業です。だけど、これをするのとしないのとだと、写真を撮ったときにかなり違います。しかもそれが、モデルさんがやるから、より一層キレイに見えるんです。モデルさんだからキレイで当たり前って思うかもしれないけど、骨格があんまりよくないこともあるんですよね。カットラインには出ないから、一般の人はわからないかもしれないけど、プロなら「これ川畑さんだよね」とわかってくれます。

 

 

僕はつくりたいイメージがあって、そこに近づけるためにカットを覚えていったんだけれど、今の美容師さんは逆ですよね。デザインよりも、毛先とか長さのことしか考えてないように見える。右と左の髪を引っ張って、長さが合っているか確かめるとか。僕はあえて「髪を引っ張って長さをチェックするな」って教えているんですけれど。だって、右と左は、骨格も髪のくせも全然違うから。キレイに収まっていたらそれでいいんじゃんって思うんです。多分、僕のカットだって、右と左で2、3㎝くらい長さが違うかもしれません。でもね、その違いっていうのが、人の心をくすぐるんですよ。

 

>いくつもの壁を乗り越えないとカットは上達しない

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