びよう道 vol.3 Double山下 浩二さん 〜「言われたことだけやろう」と思ったら成長はそこまで。新しいことをしたいから、学ぶ意欲がわくんだ。〜

 

美容室でも待遇や休日が大切と言われる時代。もちろんそれも大切ですが、美容人生のどこかでは“心も体も美容でいっぱい”という時期があってもよいかもしれません。

 

そこで、地道で壮大な鍛錬の道を歩んできた“美容の哲人”に、修業時代に一人前になったと思った瞬間や美容の哲学などそれぞれの美容の道「びよう道(みち)」について語っていただく連載がスタート。

 

第3回目は、表参道のハイクオリティサロンの代表格、Doubleのオーナーであり、現役のヘアデザイナーでもある山下 浩二(やましたこうじ)さん。美容師としての腕はもちろんのこと、美容業界で随一の音楽通としても知られています。

 

今回はそんな山下さんが歩んできた「びよう道」と、若手美容師に向けてのメッセージをいただきました。あまり知られていない技術者デビュー時のお話も必見です。

 


 

一生かけても、カット1つでさえ完全にはわからない

 

 

僕が「自分で本当にうまくなったな」と思うようになったのはわりと最近のことです。カットだけでも技術の幅が広いから、死ぬまでにカットで起こる現象すべてを説明できるかどうかじゃないですかね。恐らく、ほとんどの人がカットを説明できないまま死ぬんだと思いますよ。美容の技術を全部極めようなんて無理な話。カットならカットだけでも突き詰めていったほうがいいんじゃないですか。

 

美容師として「一人前に切れるようになった」と感じられるようになったのは、30代半ばのころ。レザーを覚えて、シザーでは実現できない毛先の質感を出せるようになったんですよ。僕にとってレザーとの出会いは、それまでの考え方をひっくり返されるような衝撃でした。でも、メインがシザーからレザーに移行するのは簡単でした。なぜなら、僕はカットを人にちゃんと習ったことがなく、自分で考えてきたので「こうじゃなきゃいけない」っていうのがないんですよ。レザーも自分で考えながら使いこなせるようにしました。ピアノだって同じじゃないですか。誰かにこれがピアノの基本だってクラシックを叩き込まれるとクラシックは弾けるかもしれないけれど、鍵盤を叩くように弾くジャズピアニストは生まれませんよ。

 

10年間くらいパーマをやめて、カットとカラーだけでデザインしていた時期もありました。カットだけで曲げたり、ボリュームを出したり、試行錯誤をしていたんですよ。レザーだけでは今流行りのパッツンボブはできませんけれど、ずっと流行るわけじゃないですからね。それに大人の女性の場合、似合わせるのが難しい。やっぱり、いろいろな人の顔に合わせていくわけですから、カットの技術も幅広いほうがいいんです。自分もまだまだだと思うけれど、ようやく自信がついてきて、肩ひじ張る必要はなくなってきましたね。自信がつくということは、見栄を張る必要がなくなることと同じだと思います。

 

>現場でかいた冷や汗の量と成長は比例する

Related Contents 関連コンテンツ

Guidance 転職ガイド

Ranking ランキング