びよう道 vol.21 Velvet on the Beach桜井章生さん 〜「やる!」と決めて退路を断て。自分の頭で考え、もがき、疑問を持て。それが上達の近道だ〜
あてもなく上京するも、運命に導かれてHAIR DIMENSIONへ
正直、その当時は「東京に行けばなんとかなる」と思っていました。なので、同じ地元で東京にいる友人を頼ってとりあえず上京。「誰か美容師を知らない?」と聞くと、「最近よく海で会う先輩がいるから紹介するよ」と。それで紹介してもらった美容師が、僕の前職であるHAIR DIMENSIONの店長さんだったんです。その店長さんに原宿や青山にあるサロンで働きたいというと、有名店がどこにあるのか教えてくださいました。でもその当時、東京のヘアサロンについて全くわかっていなかったから「どこにしたらいいんだろうな」と迷っていたんです。すると、その店長さんが「うちも青山に店を出すんだけど、よかったらうちにくれば?」と言ってくれて。「これはご縁だな」と思って入社を決めました。
僕の実家は美容室をしているので、東京で3年か4年修行したら帰って継ぐつもりでいました。東京にいられる時間が限られていたから、めちゃくちゃハングリーでしたね。京都でたくさんの壁にぶつかってもがいた経験も東京にきてから役立ちました。一度自分の頭で考えて答えが出なかったことを先輩がやっているのを見て、必死に覚えました。見て覚えろとはよく言いますけど、ボーッと見ているだけじゃ身につかないと思います。やっぱり、自分で考えて、疑問を持っているからこそ、見て覚えることができるんですよ。
その当時は、東京にいられる時間が限られているから、1番売れている人について学ぼうと思いました。自分からどんどん「撮影に連れて行ってください!」とアピールすると、忙しい先輩たちも、想いを受け止めてくれるものなんです。遠慮なくガンガンがっついていました。
せっかく現場に行くからには、役に立ちたい。例えば「ベースメイクができたら現場がスムーズになるだろうな」と思ったら、次の現場までにできるようになると決める。しっかり準備してからやるんじゃなくて、まず「いつまでにやる」とケツを決めてからやる。できないことを頼まれても、とりあえず「できます!」と答える。退路を断って、自分を追い込めばできるようになるものです。そういう意味で、3、4年したら京都に帰ると決めていたこともよかったのかもしれません。結局、僕は今も東京に残っているわけですけどね。
知恵を振り絞れ! 漫然とやっているだけでは上は認めてくれない
当時のHAIR DIMENSIONは錚々たる顔ぶれで、全体のレベルが高かったから、「このまま普通にやっていてもなかなか上に上がれないな」とすぐに察しました。なので、入社1カ月くらいのときに、代表の飯塚さんに「飯塚さん、髪が伸びているので僕が切りましょうか?」と言ったんです。「君はもう髪が切れるんだね」とお墨付きをもらうための作戦でした。上に行きたいなら、上に行くための作戦を考えることも大事だと思いますね。
セミナーや撮影に同行するときは、先輩の吸っているタバコを必ず事前に買ってストックしていました。というのも、地方のセミナーなどにいくと必ずその夜に食事会になるんです。で、先輩のタバコが切れると「ちょっと買ってきて」となる。知らない土地なのでどこに売っているかなんてわからないじゃないですか。だから買っておいたタバコをすかさず渡していました。こんなの今の時代じゃあり得ないかもしれないけど、相手を喜ばせるために自分の頭で考えることも大事にしていました。
HAIR DIMENSION時代に僕がよくつかせてもらっていたのは現AFLOATグループの宮村さんと現artifataのCHIKAさん。
二人とも仕事に対してとても厳しい人でした。お客さまやモデルさんはもちろん、編集部などの関係者に対しても気遣いがある、「お前は全然周りが見えていないな」とよく言われていました。気がつく人になるのって、頭で考えるほど簡単じゃないんですよね。それでも続けていくうちに、だんだんと周りが見えるようになりました。