びよう道 vol.21 Velvet on the Beach桜井章生さん 〜「やる!」と決めて退路を断て。自分の頭で考え、もがき、疑問を持て。それが上達の近道だ〜
美容室でも待遇や休日が大切と言われる時代。もちろんそれも大切ですが、美容人生のどこかで“心も体も美容でいっぱい”という時期があってもよいかもしれません。
「びよう道(みち)」は、そんな地道で壮大な鍛錬の道を歩んできた“美容の哲人”に、修業時代に一人前になったと思った瞬間や美容の哲学など、それぞれの美容の道を語っていただく連載企画です。
第21回目は、Velvet on the Beachの代表の桜井章生さん。カリスマ美容師を生んだ伝説のサロン「HAIR DIMENSION」で修行し、今もセミナー、ヘアショー、ヘアメイクと幅広く活躍。色気のあるヘアと熱いハートで知られる人物です。今回はそんな桜井さんに、修行時代から心がけていることや仕事の流儀についてお話しいただきました。ハングリーな若手必見のインタビューです。
「それ以上、私の髪に触らないで!」 東京行きを決めた痛恨の一言
僕は最初、京都で就職したんです。2、3年くらい無我夢中で頑張っていたら、わけもわからないまま上の立場になってしまい、なんとなく、わからないことをわからないと言えない立ち位置になってしまったんです。切り方がわからない場合は、ウィッグをたくさん持ってきて自分で考えながら切るとか、雑誌を見てイメージを膨らませるとか、そういう方法で解決するしかない。京都ではお客さまにも恵まれて、楽しく過ごせてはいるけど、ごまかしつつやっている感触がありました。例えば、お客さまに「こういうスタイルにしたい」と言われても「これは雑誌に出ているスタイルだからね」とか「髪質が合わないかもね」と言い訳して、逃げながらやっていたんです。
忘れもしないのは東京から観光で京都にきていたお客さまの髪を切ったときのこと。お客さまから「質感を軽くしてほしい」と言われたけれど、僕にはうまくできなかったんです。レイヤーを入れるためにザクザク切っていくと「そうじゃなくて軽くしたいんだけど」と言われました。僕からしたら軽くする方法はレイヤーしかなかったんです。最終的に僕がレザーを取り出したとき「それ以上、私の髪に触らないで!」と…。このほかにもわからない技術がたくさんあったし、いよいよ壁にぶつかりまくって、1年間くらい独学で試行錯誤をした上で「これはもう東京に行くしかないな」と思ったんです。
>あてもなく上京するも、運命に導かれてHAIR DIMENSIONへ