びよう道 vol.15 HEAVENS 小松 敦さん 〜たとえセンスがあったとしても、それを人に伝えられなくては意味がない。そう思って僕はやってきた〜
技術は、繰り返しやすく、認めやすく、広めやすいことが大事
25歳の頃には店長を任されていました。最初は自分が勤務しているサロンだけですが、次第にエリアを任され、さらに全店の教育を担当するようになってくる。新しいサロンをつくるときにも、総合的なディレクションを任せてもらったのですが、今思うと20代の自分によくそこまでさせてくれていたなと思います。責任の範囲が広がることは、自分のやりがいにもつながっていましたね。
また、立場が上がるにつれて、ヘアデザインをつくる立場から、スタッフに伝えなきゃいけない立場になりました。スタッフに伝えるためには、伝わる言葉を丁寧に選ばなくてはなりません。また、お手本としてスタッフに見られるので、サロンワーク、デザインワークの所作も考えるようになりました。
僕らの技術っていうのは、ただ単にカットが上手いだけじゃダメなんです。繰り返しやすく、認めやすく、広めやすいことが大事。スキルの外側はヘアデザインを通じて見ることができるんですが、内側を伝えていかないとサロン全体としてのレベルが上がりません。
大体の場合、美容師のセンスって本人にしかわからない感覚的なものです。だから、そのセンスを再現できずに突発的な一発屋になってしまう人が多い。どの世界でもそうですけど、感覚的なものだけで何十年もご飯を食べている人なんていません。技術の根底を探ったり、センスやスキルを裏付けたり、肉付けをしたりしている。僕が目指してきたのは、誰にでも伝わって、誰にでも使えて、クオリティも高められる考え方です。それをずっと考え続けて独立して以降、自分の中で体系化したのがツーセクションカットという概念です。
ヘアスタイルは、基本的にグラデーションとレイヤー、ワンレングスの組み合わせ。それがどんどん複雑化されて、これまでいろいろなヘアスタイルが発表されてきました。僕はそれを単純化するために、上と下で分ける『ツーセクションカット』を提案したんです。ツーセクションカットはたとえば、グラデーションとレイヤーとか、レイヤーとレイヤーの組み合わせ。あとはレングスの操作というシンプルな考え方です。これは、どんな時代、もしくはどんなサロンの文化においても成立する概念だと思います。