びよう道 特別編 vol.11 ACQUA綾小路竹千代さん 〜「今日から一生担当します」という気持ちで、生涯を通じて寄り添い続ける〜
進化するお客さまに常に学ぶ
あるお客さまは「私、ガンになりました。この後抗がん剤で髪が抜けてしまいますから、最後になるかもしれませんが、綾小路さんにカットしていただいて、元気になってまた切っていただこうと思っています!」とおっしゃってくださいました。この方はTVディレクターでもあり自分のガンとの戦いの全てをカメラを回し続け、ドキュメントにして、TV放映までされ、評判になりました。今も元気になってサロンで担当させていただいています。
残念ながら亡くなられたお客さまもおられました。後にお嬢さまから「最後まで母は綾小路さんに髪を切ってほしいと言って亡くなりました」と伝えられた時は、お役に立てなかったことを悔しく思いました。
今僕のお客さまの最高齢は96歳のおばあちゃまですが、娘さんと共にお見えになります。杖からカートになられましたが、まだ通っていただいており、カット、カラーの後にリハビリに行かれます。娘さんたち、お孫さんたち、その子供たち4世代を担当させていただいていますが、美容師冥利に尽きます。
もはや絶滅危惧種の美容師ですが、お客さまに接して「今日も幸せだなぁ〜」と思っています。毎日が楽しい、幸せ、そんな理想の美容師を目指し一人一人のお客さまの人生に寄り添い、学び、自分なりのできることで役に立ち、生涯現役で元気に頑張りたいと思っている今日この頃です。
いつかあなたとの素敵な出会いをお客さまは待っている。
- プロフィール
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綾小路 竹千代(あやのこうじ たけちよ)
ACQUA会長
1962年京都西陣生まれ 高校生16歳のときアルバイトで美容業界に入り23歳で上京。ZUSSO・OPERAを経て1994年野沢道生、青山正幸らとACQUA設立。1997年に日本武道館で初のヘアライブショーを仕掛けるなど美容業界の地位向上に尽力した。現在はあえて表舞台から身を引き、真にお客様と向き合い、後進の育成に注力している。
(文/外山武史・撮影/菊池麻美)