びよう道 特別編 vol.11 ACQUA綾小路竹千代さん 〜「今日から一生担当します」という気持ちで、生涯を通じて寄り添い続ける〜
臨機応変
僕が思う美容技術の中でカットやカラーパーマなどいろいろありますが、それらをまとめて形にするイマジネーション、相手の気持ちを汲み取り、寄り添い、本当の意味でのかたちにできるコミュニケーション能力が一番大事じゃないかと思います。
夏の暑い日、予約のお客さまが時間通りにお見えになられた時、額に汗をかいておられる。それなのに5分10分待たずにいきなり「シャンプーにお通しします」ではダメですよね。今、この瞬間お客さまにとって何が一番必要なのか? 例えば冷たいおしぼりです。それをただ渡すのではなく「遠慮せずに首筋に当ててくださいね!」その一言が相手を思いやる技術ですし、タイミングを見てシャンプーに通す、その時に「ぬる目のお湯からで」の一言があるとよりgoodですよね。
カットして終わりではなくリターンから始まる1人前の入り口
美容師の仕事はカットが全てじゃないんですよ。サロンに来るまでのお客さまの気持ちであったり、切っている時、帰って行く時、更に1週間先、1カ月先の気持ちまでも含め、いかにプロデュースしていくかってことであり、お客さまの生活の中にある日常をいかに陰ながらサポートできるかなんです。コミュニケーションといってもやたら馴れ馴れしく話すことではなく、お客さまの気持ちを感じ取り、寄り添うことから始まり、時にはあまり会話をしないこともコミュニケーションなのです。どんなお客さまも初めての出会いがあり、そこで気に入っていただければ、一生その縁は続いていきます。ですからファーストコンタクトの時「今日担当します○○です」ではなく気持ちの上では「今日から一生担当させていただきます、綾小路です!」ぐらいの心意気が欲しいですね。
時にお客さまは「私にどんなスタイルや長さが似合いますか?」等おたずねになられることが多々あります。そんな時、私なりの似合う定義をお話しします。
①まずはお客さまの本来の髪質を活かす
くせ毛だっていろいろありますが、くせ毛がダメではなくてその個性を活かせるスタイルにすれば良いのです。
②手入れが楽
サロンで素敵に仕上がっても家に帰ってシャンプーをしてドライヤーで乾かしてみたら全く再現できないではダメです。
③スタイルの持ちが良いことです
④髪が傷んでない
歳を重ねてくると、白髪とどう向き合っていくか?は避けて通れない道です。なるべくサロンで優れた技術と上質な薬剤でダメージを少なくと思う意識を持っていただく。
⑤周りから褒められること
例えば、50歳を越えて、カラーを毎月されてもロングでツヤツヤの髪で普段からシャンプーやトリートメント等に気を使っていただく。何年かに一度の同窓会に行けば、そのツヤツヤの髪がブランドバックより価値があると皆さまから褒められるはずです。日々の髪を大切に想う気持ちと生活の余裕がその方らしさ、それが素敵だと私は思っています。これは自分自身が歳を重ね長年同じお客さまを担当させていただき、そこに互いのドラマが生まれていることに気づかされ、自分の生き方や役割を感じています。