RUALA角薫さんのびよう道 〜大切なことは、亡き師匠とお客さまに教えていただいた。女性美容師として駆け抜けてきた30年の紆余曲折〜
60人のスタッフをまとめる店長時代の苦悩
美容師としての次のステップに迷っていたとき、「店長にならないか」という話が来ました。スタッフ60人をまとめながら、何かあれば責任をとる、とんでもなく大変な仕事だと知ったのは、引き受けた後でした。
60人もいたら「店長、相談があります」と話しかけられることもしょっちゅう。「内容はポジティブ、ネガティブどっち?」と聞いて、ポジティブな相談ならすぐ聞く。ネガティブな場合はちょっと待ってもらって、周りの子たちに「最近あの子どんな感じ?」と様子を伺う。事前に情報を集めてから相談に乗るようにしていました。
自分の中で決めていたのは、スタイリストになるまでは頑張らせること。スタイリストになってからなら他でも食べていけるからです。なので、「スタイリストになったら、その先はどうするか自分で決めなさい」と伝えていました。すると「明日から頑張ります」と言ってくれる子が多かったです。
プラダのシャツにブリーチ剤…忘れられないクレーム
クレームの対応も店長の仕事です。一度、スタッフがお客さまのプラダのシャツをブリーチ剤で汚したことがあったんですよ。「どうしてくれるんや!」「全く同じものを探して用意しろや!」関西弁でまくしたてられて、本当に怖かった。青森育ちの私には関西弁は怖いし、人に怒鳴られた経験もなかったんです。
最終的には同じシャツは見つけられなかったけれど、最新のモデルを用意して納得してもらいました。後輩がクレームをもらうのは、店長の教育が行き届いていないからなんですよ。だから、クレームは店長の責任。クレームから逃げたいと思う気持ちもありましたが、神様がくれた試練だったんです。
独立した今は「あのとき逃げなくてよかった」と思います。RUALAは今14名の会社です。店長時代と比べたら1/5ですから、苦しかったときの経験が今に生きていますね。