siki 磯田基徳さんのびよう道〜「感謝」を忘れないこと。接客業でもある美容師は”人間性”が全て〜
美容室でも待遇や休日が大切と言われる時代です。もちろんそれも良いですが、美容人生のどこかで“心も体も美容でいっぱい”という時期があっても良いかもしれません。
「びよう道(みち)」は、そんな地道で壮大な鍛錬の道を歩んできた“美容の哲人”に、修業時代に一人前になったと思った瞬間や美容の哲学など、それぞれの美容の道を語っていただく連載企画です。
今回は、ヘアコンテスト受賞者を数多く輩出する表参道の人気店『siki(シキ)』代表、磯田基徳(いそだ もとのり)さん。29才で独立して今年6年目。コロナ禍を乗り越えて現在6店舗を展開し、約70名のスタッフが在籍する組織に育てています。そんな磯田さんは、どのような思いや行動を軸に「美容の道」を進んできたのでしょうか。ターニングポイントになったエピソードや普段から大切にしていること、これから挑戦したいことなどについて伺いました。
アシスタント時代は、”覚悟“が決まっていなかった
僕のアシスタント時代は本当の意味で”覚悟”が決まっていなかったので、ふわふわしていたなと思います。新卒で『SHIMA』に入社し、朝も夜も練習がある中で、しっかり取り組んだのは朝だけ。夜は「どうやってサボろう…」なんて考えて練習しているフリをしたり、見つからないように上手く抜け出したりしていました。でも要領だけは良かったので、普段から先輩たちのことをめちゃくちゃ観察して「なぜこの人は売れているんだろう?」と自分なりに分析したり、綺麗な所作や技術を真似たりしていました。
入社3年目に当時の店長だった小谷さん(dakotaグループ代表)が『salon dakota』を立ち上げることになり、僕もオープニングメンバーとして移籍することにしました。デビューはそこでしたのですが、ゼロからの集客。それまで背負っていた有名店の看板もないですし、その頃はまだSNSも盛んではなく”セルフブランディング“という言葉すらない時代。なので、大手集客サイトの掲載から始めたんです。
そこからすぐに同期たちは指名が入りましたが、僕だけが初月の指名ゼロ。それがもう、めちゃくちゃ悔しくて…。そのとてつもない悔しさを経験したことで、初めて本気のスイッチが入りましたね。
フォトコンテストでグランプリを獲得。状況が一変!
その頃はInstagramもそこまで広がっていなくて、撮影している美容師はほとんどいなかったんです。でも僕はお客さまが来ないし営業中にモデルを呼べる環境だったので、facebookでモデハンして二日に1回ペースで2スタイルを撮影しました。日曜日の夜は、2人呼んで撮影。その写真をInstagramに毎日投稿したんですけど、あの頃たぶん日本一撮影していた美容師だったと思います(笑)。そんな生活を続けていたら、だんだんとバランス感覚が養われて撮影技術が上がり、売上も5万スタートから少しずつ上がっていきました。
3ヵ月後、MILBON×sweetのフォトコンテストがあることを聞いて応募してみたら、「グランプリ」を獲得したんですよ。グランプリをとると雑誌の2ページをいただけるんですが、いろいろなミラクルが重なって8ページで特集していただけることになって。専属モデルの撮影のほか、13人のモデルさんがお店に来てくれて外ロケするという夢のような企画でした。23歳で人生初の雑誌撮影でしたし、めちゃくちゃ緊張して一週間くらい胃が痛かったですね。
当日は9席のセット面がモデルさんで埋まって大忙しでしたが、先輩たちが助けてくれて、前職の先輩まで手伝いに来てくれました。真夏で暑い日だったんですけど、気づいたらみんなが僕のために力を貸してくれていたんです。本当にありがたかったし、その撮影を機に仕事の幅が広がり、状況が一気に好転しました。大きなターニングポイントになりましたね。