SCREEN 神谷翼さんJHAグランプリや銀座出店はあくまで通過点。次々と新たな課題へと向かう挑戦者のびよう道〜
連覇を目指したコンテスト落選…非常階段で涙
26歳のときに初めてヘアデザインコンテスト「トレンドビジョン」に出場しました。絶対に優勝したかったけれど準優勝。初めてではすごくいい成績だと思うのですが、死に物狂いでやっていたからすごく悔しくて大泣きしたのを覚えています。でも、その年同じく初めて挑戦したJHAではエントリー部門のライジングスターというカテゴリーで最優秀賞をもらったんです。しかも初めて自分で写真を撮った作品だったんですよ。お金がなかったから中古の安いカメラで撮影した作品です。その当時、PEEK-A-BOOの中でもクリエイティブに力を入れている伊東秀彦さんが直属の上司だったので、自分で撮影して編集する様子を間近で見ていたんです。
見よう見まねでつくったものが選ばれたから「もしかしたら俺ってすげえかも」みたいに正直勘違いして調子に乗っていた自分がいました。もちろん努力はしていて、何百枚もプリントして一番いいものを選んだし、命をかけてやったから出た結果だったと思います。まわりにも持ち上げられて自信満々でした。だから2年連続で自分はJHAに選ばれると思って、翌年また自分で撮影して編集した作品を出したんですよね。
ところが結果は落選。このショックは大きかったですね。「結果はどうだった?」と期待して尋ねてくる先輩や後輩を避けて、非常階段で涙したことを思い出します。でも、悔しい思いをしてよかった。満足したらそこで止まってしまいますから。
そんな経験をしたからか、僕は上手くいっているとき、居心地がいいときこそ、なんだか怖くなるんです。だからまた新しいスタートを切りたくなる。のちに僕が充実していた東京での美容師生活を手放して、縁もゆかりもない神戸でSCREENを立ち上げたのも、そういう気持ちが根底にあったからです。
神戸で生まれたSCREENは本当にゼロからのスタートだった
たまたま旅行で訪れた神戸居留地のハイブランドと歴史的な建造物が混ざり合った街に惹かれて、僕がまたゼロからスタートする場所にふさわしいと感じたんですよね。KAORIと福井優生の3人でSCREENをオープンさせたものの、最初は全くお客さまがこなかった。2月の寒い日だったので、雪がしんしんと降っていたのを思い出します。お客さまがいないのに店舗の中にはお祝いのお花がいっぱい。とても切なかったですね。
そんな中、一人の女性がきてくれて、僕は渾身のグラデーションボブを切ったんです。すごく喜んでくださって、これは紹介してくれるだろうなと思ったら、後から分かったのですが、その方は美容室向けの保険の営業の方でした。あのときは相当凹みましたね。
でも落ち込んではいられない。人を雇ってやっているわけだし、もう生きるか死ぬかだと思ってやっていたら、少しずつ紹介が増えて、1年後に気がついたら新しい店舗を出すところまできていました。6年目には銀座に出店。今も地道にやっているんだけれど、自分が想像している何倍も速いスピードでここまできた感覚です。
こだわってきたのは、客層や技術を絞らず、どんなお客さまも満足させること。一つの技術に特化したら目立ちますが、そこだけを追いかけるのも大変です。ブームが去ったら飽きられてしまいます。
SCREENはどんなお客さまに対してもベストを尽くしてきたから、年齢性別スタイル問わずに支持されるサロンになったと思っています。
本気になれば、大抵のことは成し遂げられる
2018年にはJHAでグランプリもいただきましたが、この時は26歳のときに悔しい思いをした分を取り返したくらいの気持ちがあって、すごく嬉しかった。でもね、グランプリをいただくと今度はまた新しい課題をみつけたくなるんです。今は自分の成績に意識は無く、今度はSCREENの次の世代にチャンスを与えて、新しいスターを生み出したい思いが強く、それこそが自分の今の1番の挑戦だと思っています。僕は10年目の節目を強く意識しているんですが、今8周年だからあと2年でどんなチャンスを与えられるか、まさに今考えているところです。
「本気になれば大抵のことができる」これは入社式にスタッフの橋本佳奈がみんなの前で話した言葉で、なるほど、そして頼もしく成長したなと思わせてくれた言葉なんですが、この言葉は本当だと思うんですよ。自分にもやはりそういう経験がある。誰だって本気でやれば大抵のことはできる。けれど、実は本気になれるかどうかが一番難しい。じゃあ、どうしたら本気になれるかといったら、やっぱり自分の好きなことや、やりたい事に夢中で打ち込んでいるときですよね。
やりたいことを本気でやって、チャンスをつかむ美容師が、これから一人でも多く出てくることを期待しています。
- プロフィール
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神谷 翼(かみたに つばさ)
SCREEN 代表取締役
1984年生まれ。
PEEK-A-BOO を経て2014 年 SCREEN をオープ ン。2015 年にSISTER.BY SCREEN をオープン。2016年SCREEN を拡張オープン。2020 年5月、東京・銀座にSCREEN GINZA MAISON. をオープン。2021年10月SCREENを拡張移転オープン。
2020年 女性モード社から著書 THE CUT DESIGN VARIATION 出版
2018年 JHA 大賞部門グランプリ
2019年 JHA 大賞部門準グ ランプリ
2010年 JHA RISING STAR 部門最優秀賞
サロンワークを中心に国内、海外でのヘアーショー、撮影、書籍制作、店舗デザインなど
マルチな分野でデザインを発信する。
Instagram:screen_tsubasa
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