びよう道 vol.31 Un ami森内 雅樹さん 成長しようと思ったら、いつまで経っても満足しない。僕が満足するのは、死ぬときかな。
美容師として、経営者として、今が一番大変かもしれない
やがて、前のサロンから独立してニュートラル(現Garden)を立ち上げましたが、雑誌編集者さんとの付き合いは続いていました。
たくさん仕事の依頼をいただいていたけれど、ずっと自分ばかり表に出ているわけにもいかない。それだとサロンも大きくなっていかないですから。そこで、後輩にどんどん仕事を振っていきました。「僕だけじゃなく何人か一緒でやる企画つくりませんか?」と編集者さんに提案したんです。その当時、僕と一緒に誌面に出た後輩は、今のUn amiやGARDENのトップデザイナー(幹部)になっています。
その後に今のUn amiをつくり、みんながどんどん育ってくれればいいなと思って、今日までやってきました。上のスタイリストが詰まると、下の子たちが停滞してしまうので、新しくサロンをつくって丸ごと任せたこともあります。
そうやって、上の子たちに新しい活躍の場をつくり、下の子たちにチャンスを与えたいなと思ってきたんですけど、期待していた子たちが辞めてしまうことも少なくないです。美容師になって随分経ちましたけれど、今が一番大変ですよ。
美容師は一人前の技術を付けるために、やはりある程度は時間をかけて修行をする必要があります。ただ最近の業界の流れで大切に育てたスタッフが引き抜かれてしまうこともあります。それは残念なことではありますが、悲観はしていません。逆に僕たちも変化をしていく時が来ているサインです。教育をしっかり受けて一人前になったスタッフが安心してより活躍できる場を加速して作っていきたいと思っています。
例えば、今新しくFCサロンをオープンしているのもそのアイディアの一つです。通常のFCというより「一国一城の主としてサロンを持ちたい」というスタッフの独立支援として機能すればよいなと思って始めたものです。今後も新陳代謝をしてさまざまな場でスタッフのやりたいことをサポートしたいと思いを巡らせているところです。
僕らは美容師を育てることはやめません。ヘアサロン事業をビジネスへの「投資」として見ている人は、ただ単に一人美容師が増えればいくら利益が増えるみたいに「利回り」の感覚で考えているかもしれません。僕は「そういう考え方するのはやめてよ」って思うんですよね。美容師ってそういうものじゃないですから。
僕ら経営者は、その時代にあったサロンをつくる必要があります。だから、これから教育から何から変えていかなきゃなと思っています。だけど、スタッフを守り続けることは、これからもずっと変わりません。
Unami 代表
森内 雅樹(もりうち まさき)
2006年須崎・加藤両氏と共に原宿に「GARDEN」設立。その後Unamiを代表として設立。今でもサロンワークに立ち、ヘアーショーや撮影なども多い。最近では、さまざまプロデュース依頼が殺到し、美容師目線のプロダクツブランド、株式会社Ung設立。また自身プロデュースの『ロレッタブランド』商品も、世間からの注目度が高い。GARDEN初の海外進出となる、GARDEN NEW YORKも注目されている。長したスタッフの次のステップの場として志木や横浜にFCサロンもオープンしている。
(文/外山 武史 撮影/菊池麻美)