びよう道 vol.27  風と雲の美容室 JUNさん 〜30年間続けていてもまだ半人前。いくらやっても極められないから美容師の仕事はおもしろい〜

カリスマブーム終盤、お客さまの一番になることの大切さに気づいた

 

 

自分はまだまだ半人前だと思っていますが、美容師としての成長を感じられた出来事はいくつかあります。一番印象に残っているのは、カリスマ美容師ブームに陰りが出てきたころの経験です。

 

スタイリストになって月200万円、300万円とガーッと売り上げを伸ばしていたのですが、あるとき100万円くらい落ちたんですよね。それがすごくショックで。鼻っ柱を折られるような感覚を味わいました。

 

その当時、自分のお客さまは新規がほとんどだったんですよね。新規のお客さまがリピーターになって、100回、200回きてくれるかがこの仕事の勝負だと思うんですよ。長いお付き合いをするための技術とコミュニケーションが未熟だったと思います。

 

 

美容師ブームの時代、表参道のサロンには全国各地からお客さまがひっきりなしに集まっていました。自分の力だけではなく、メディアやブランド力に助けられていたんです。お客さまが自分を指名して来てくださるのは特別なことだと改めて気づきました。

 

忙しいときは1日に25人以上入客したこともありましたが、予約を1時間に2人くらいに制限し、お客さまと向き合う時間をとる形に変えました。そして、リピートしてくださるお客さまを飽きさせないように、次にお客さまがくるときまでに自分を進化させることを意識しました。

 

美容師として一人前かどうかは、お客さまが決める

 

 

僕が若手のころ、身近に性格が悪いなと思うような先輩もいました。でも、売上を上げているのをみると僕は尊敬するんですよね。先輩のことは嫌いなんですけど、売上があるということは、お客さまに支持されている証拠であり、客観的な評価だからです。

 

数字だけ上げていれば美容師として一人前とは言えません。でも、なんの根拠もないのに一人前だと言っている美容師よりもはるかに説得力があります。つまり、自分が美容師として一人前になったのかどうかは、自分で決めることじゃないと思うんですよ。

 

 

それに自分自身ではまだ至らない部分がたくさんある。1回でビシッとカットを決められるときがあれば、2回、3回かかることもあります。もうすぐ美容師になって30年になるのに、まだ心の中に葛藤はある。だからこそ僕は美容師を続けていきたい。30年やってもまだまだ上があるなんて素敵だと思いませんか。

 

 

そう考えるとやっぱり僕はまだ半人前だし、それでもいいと思っています。

 

プロフィール
JUN
風と雲の美容室 代表

1973年生まれ。神奈川県出身。地元・小田原のサロンを経て渡英し、ヴィダルサスーンで半年間学ぶ。その後、青山「PHASE」に入社。ディレクターとしてサロンを牽引しながら、雑誌撮影、セミナー講師など幅広く活躍して独立。2016年、高円寺に『風と雲の美容室』をオープンさせる。

 

(文/外山 武史 撮影/菊池麻美)

 

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