「美容師の技術で世界の貧困をなくしたい」アトリエマイ代表が語る社会貢献の可能性

水の問題を抱えるアフリカの村に「足立区の泉」を建設

 

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-ベトナムでのボランティアカットのほかには、これまでどのような活動を行ってきたのでしょうか。

 

5年ほど前には、アフリカのベナン共和国にあるチャンカ村で、井戸建設活動を行いました。井戸建設にあたっては、グループ店全店のカウンターに基金箱を設置したのですが、足立区の地域のみなさんに向けて井戸掘りに必要な分の資金を募った結果、3年で目標額を貯めることができました。

 

実際の井戸掘りの作業は地下100mも掘らないと水が出てこないので、フランスの専門業者に依頼し、私は資金がどう使われているかを視察する形で現地での活動に携わっていたのですが、無事完成した井戸は普段お世話になっている地域にちなんで「足立区の泉」と名付けました。

 

-井戸堀支援プロジェクトはどのような想いで始めたのでしょうか。

 

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チャンカ村では子供や女性が毎日の仕事として4~5km離れた川へと水汲みに行くのですが、生活用水には雨水を溜めたものを使っているため不衛生ですし、その影響もあるのか平均寿命が50歳ほどと短いんです。でもこうした現状は、アフリカの多くの地域で同じことが言えるんですよね。

 

そんな現状を知ったとき、「慈善事業に取り組める規模のビジネスをする」というのが自分の夢の一つでもあったので、「美容業での利益が出た結果、新たに店を出店するのもいいけれど、そうではない社会貢献の形もあるのではないか」と思ったんです。そして、その方法を考えるなかで、井戸建設ならば自分たちでも役に立てることを知りました。お金を与えるのではなく、井戸を掘ることで、ずっと水の恩恵を授かることができるんですよね。

 

実際に井戸から水が出たときには、村長さんから「自分が生きている間に村に井戸ができるなんて夢にも思わなかった。遥かに遠い日本からこのような貧しい国にきていただいて本当にありがとうございます。神様に感謝します」と言葉をかけていただき、本当に達成感がありました。

 

サロンワークと社会貢献活動に共通する意識に気づけた

 

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-サロンが一丸となって社会貢献活動に参加していますが、活動に参加したスタッフの姿にはどのような変化がありましたか?

 

私自身はこうした活動に対して特別な意識は持っておらず、むしろ普通のこととして取り組んできたのですが、やはり若い世代のスタッフを連れていったことで、日本がいかに恵まれているかということを彼ら自身が理解するようになり、社会貢献に対する意識が高まったと感じています。

 

普段は「お客さまのために」とサロンワークを行っていますが、困っている誰かのために行動するという意識は、社会貢献活動にも共通していることにも気づけたのではないかと思います。

 

より多くの美容師が賛同できる活動にしていきたい

 

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-今後の取り組み、展開についてお聞かせください。

 

私自身、これからの美容業界における美容師の価値がより高まっていって欲しいと思いますが、社会貢献活動を通して美容界に与えられている影響は、まだまだ足りていないと感じています。

 

ベトナムには、孤児院にすら入れない多くの子どもたちが夜遅くまで労働をさせられている現状が依然としてあり、私たちの人数だけでは限界を感じる場面も出てきています。ですので、活動を通してもっと多くの孤児たちに日本の美容師、理容師の技術を体験してもらうためにも、今後より多くの美容師に私たちの取り組みに賛同していただけるよう、活動していきたいと思います。

 

プロフィール
株式会社アトリエマイ代表
中橋康長(なかはし やすなが)

美容学校卒業後、都内各店を経て、ドイツ デュッセルドルフ クロイツ通りの「サロンMAI(Yaeco Nagasawa)」でトップスタイリストとして勤務。その間、ロンドンにも渡り、トニー&ガイでもライセンスを取得。年齢・国籍・性別・ライフスタイルなどにこだわらず、「すべてのお客さまに夢と感動を与える」ことをサロンのモットーに、現在国内外に店舗を展開。撮影・ショー・講習はもちろん経営者として21世紀の新しいサロン経営に取り組んでいる。

(取材/文・阿部夕華)

 

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