【威風堂々!アラ還美容師】銀座会員制バーで激論!バブル世代を駆け抜けた賢者が教えてくれる人生の処世術とは!?「若い世代は自分に投資せよ」
何が起きても動じない心と体の強さを育む
——お二人はいろいろな若手の美容師さんたちとも交流があると思うのですが、最近の美容師さんについて何か思う点などはありますか?
吉田:最近、表に出ようとしない人が多くないですか? この業界って、他業種と違ってタレントのようなエンタメ要素もあるので、自分たちが商品というという側面もあると思うんですね。僕の親の世代は、鏡の中でお客さまより地味でいるべき時代でしたけど(笑)、今はそうではなく、いろいろな意味で美容師は憧れてもらわないといけないので。もっと自分を出して、売っていく方がいいと思うんです。出てもいない人たちが、出ている人たちを裏でとやかく言うのも違うしね。
笠本:あと思うのが、30代後半くらいの美容師さんたちが、なんとなくもうできあがっちゃった感になってるんですよ。だいたい歴20年弱くらいの人たち。僕らから見たら、キャリアを1冊の雑誌だとしたら目次と表紙くらいしか見てないと思うんだけど。まだまだ厚みがあるからね、っていう。美容師は、技術だけじゃ売れないんですよね。そこの完成度を高めることが売れる近道だという思いが強すぎるのかな。でも技術と同じくらい大切なことがあって。それは、自分自身の厚みや旨みを、お客さまにどれだけ「ジワッ」と浸透させられるかなんです。テクニカルだけじゃなくて、上手く見せる。
吉田:中身は面に出てくるからね。同じ白いTシャツを着ていても、素敵な人は素敵に見える。人によって到達点は違うと思うけど、未来のための準備よりも、まず今日を必死で生きることが大事なんです。「今」なんですよ。
笠本:目の前のことをコツコツやって、その結果が「今」になるので。先のことを考えず、とにかく目の前のことに全集中することです。僕はアラ還ですけど、技術的に前より今の方がうまくなってるんですよ。デザインが、カッコよくなっているんですね。お客さまからは、内容がアップデートしているんだから「値上げしなよ」って言われます(笑)。
吉田:僕らも、まだまだアップデートできますよね。若い子たちは今まだ夢を叶える途中段階だと思うんですけど、人生は何があるかわかりません。自分が最高のエネルギーを使って頂上まで到達し、そこから転げ落ちたとしても、もう一度頂上に上がる気力や体力を鍛錬することは今からやったほうがいいです。メンタルは大事ですよ。「これくらい何でもないじゃん、命とられないんだから」という気持ちを育てることです。
笠本:本当にそうですね。いろいろ経験しないままフリーランスになってしまうと、潰れる人も結構多いじゃないですか。これがダメなら次はこれ、という「次のカード」を持っていれば、自分が40代、50代になったときの美容師像も描けるんじゃないかなと思います。
(文/織田みゆき 撮影/宮崎洋)