【威風堂々!アラ還美容師】銀座会員制バーで激論!バブル世代を駆け抜けた賢者が教えてくれる人生の処世術とは!?「若い世代は自分に投資せよ」
時代と共に技術面も美容師のあり方も変化
——昔と比べて、技術面の変化はどう思われますか? また昔のサロンワークの傾向を教えてください。
吉田:今の方が断然、複雑ですよ。昔はカット構成がまだ成熟する前だったから、ワンレンもソバージュもバツバツ切ってました。セニングを入れた覚えもないですし。メディアもそうですけど、新鮮なスタイルを作るために「じゃあ1cm幅で切ったらどうなの」という流れから、どんどん複雑になってきて。それならセニング2回入れるのと変わらなくない?みたいなね(笑)。技術教育の仕事をしていて感じるのは、極めてない美容師であればあるほど、複雑なことをやっているんです。それこそワンパネルを3回やれば終わるのに10パネルに分けて何回もハサミを入れるとか、仕上がったあとにもう一度切ってみたりとか。もっとシンプルに考えた方がいいと思うんですよ。
笠本:今はブローブラシをもたない美容師も多いですよね。僕らはブローを相当やった世代ですから言いますけど(笑)。
吉田:やってきたよね。ブローせずにカット&フィニッシュがよしとされた時代もあって、ハサミの精度がかなり高度じゃないと、という時もありました。今は技術がなくてもアイロンでスタイルを作れちゃうから、昔よりは簡単だと思いますよ。僕らはアイロンを使わなかったからね。あと感じているのは、今の美容師さんたちはお客さまにすごく寄せていきますよね。「いかようにでもいたします」という感じで、「自分のデザイン能力とかスタイルを出さないというか。
笠本:それ、僕も感じます。昔のお客さまは、技術面に指図する方が多かったですね。ここは何cm切ってくださいとか、ここにレイヤーを入れてほしいとか。「デザインを含めているのが僕のスタイルなので、そういうことでしたら他のスタイリストを紹介します」と言って、僕は他のスタッフに変わったりしていました。
吉田:ですよね。「あなたに似合わないと思うものを作るのはできないので、おかえりください」というのは、真剣に向き合っているからこそアリだと思うんですよ。極端な言い方かもしれないですけど、「僕が提供するスタイルがお気に召さないなら、違う美容師さんのところに行ってください」ということは、いつも思っていて。
笠本:大事だと思います。それが、まわり回って自分のブランディングにつながってくるので。
吉田:僕は足を組んでいたお客さまにも厳しかったので、その頃のお客さまからは今も「あの頃は緊張感すごかったよね」って言われます。ただ、そういうお客さまは離れないんですよ。あの頃のお客さまへの教育は正しかったのかなと思っていますし、僕が50代でフリーランスになってからはそのお客さまに助けてもらっていて。本当にありがたいと感じますし、昔に比べると、おじぎも10cmくらい深くなりました。