「“美容室”ではなく“美容師”という職業でみていた」gricoエザキヨシタカさん、20歳の原点

すべてのことに120%の気持ちで取り組もう

 

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-今、美容師になりたいという人が減っていると聞きますが?

 

「美容師になりたいと考える人が減るのは仕方ないことだと思います。だって、美容師って仕事はキツイし、忙しいし、それなのに低所得。どう考えたって、みんなが憧れるような職業ではないですよね。

 

昔は、美容師は髪を切るだけの人でした。でもそれがパーマをかけるようになって、カラーをするようになって。そして偉大な大先輩たちが“カリスマ美容師ブーム”をつくった。そのときに美容師の社会的な地位は画期的に上がったと思うんです。でも、その先輩たちが成し遂げてくれたことにあぐらをかいて、僕たちがそのまま継続しているだけではいけないと思う。一部の人たちだけが有名になって、お金を稼げるのではなく、美容師全体の底上げをしていかないと。それが僕たち世代に課せられた義務だと思います」

 

-そのために必要なことは?

 

「美容業界の中だけでなく、外の人たちとも交流していくことが大切ですよね。鏡の前から広がる仕事って、まだまだあると思うんです。例えば、うちの場合だと、ソフトバンクの役員の方がお客さまでいらしていて、『メイク講習をしてくれ』と言われて、行ったこともありますし。ヘアサロンの鏡の前って、いろいろな人に会える最高の社交場だと思うので、そのチャンスを逃さないようにしたいですね」

 

-美容学校に通っている美容師の卵たちにアドバイスをお願いします。

 

「学生時代は、たくさん本を読むこと。マンガでも小説でもなんでもいいと思います。たくさん遊んだほうがいいし、いろいろなことに興味を持って、うまくいかないことにはずっと挑戦してほしい。僕もワインドはうまくいかなったし、ピンカールとか、ウエーブも上手にできなかった。でも、うまくできないなりに頑張って、コンクールまでに自分が納得できる形まで持っていけたらそれでいいと思うんですよね。これは絶対に勘違いしてほしくないのですが、学生のときは、一生懸命やっていたら誰1人として凡人はいないんです。コンクールで賞を取らなきゃダメだと思ってしまいがちなんですが、賞取ったからって美容師に向いているとは限らない。それよりも、とにかく一生懸命やって、絶対に人を幸せにしたいと思う人のほうが成功するんじゃないかな。

 

うまくいかないことは僕も今でもありますよ。でも、最大限まで頑張って、120%向き合うことが大切なんです。学生時代のワインドやピンカールの練習でも、一見、意味がないと思うことにもちゃんと意味がある。それはブローのときの手の角度かもしれないし、コームの使い方かもしれないし、頑張る精神力かもしれない。全然関係ないように思えることかもしれないけど、意味がないことなんてひとつもなくて、それを挑戦し続けたら、それがいつかチャンスになると思います。学生時代にコンクールで賞を取れなかったり、うまくいかなかったりすることを卑下する必要はまったくなくて、うまくいかないことを頑張り続けられる精神力を持って、挑戦し続けることが大切だと思います。

 

そして、金太郎飴みたいに切っても切っても自分の顔しか出てこないような“自分が有名になりたい”だけの美容師ではなく、切るたびに他の人の幸せな顔が出てくるような美容師を目指してほしいですね。そうすれば絶対にみんな協力してくれると思います」

 

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grico代表/エザキヨシタカ

大手サロンに就職後、1年半でスタイリストに。09年、原宿にヘアサロン「grico」をオープン。雑誌や業界誌で活躍するほか、芸能人のヘアメイクなども担当。一美容師としてだけなくて、経営者として、美容業界の内外から注目される。

 

 

(取材・文/QJナビ編集部)

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