後輩にとってうるさい存在と思われてもいい —オーナーとわたし。女性美容師の右腕物語 ACQUA 小村順子さん
ついてきなさいとは、言いません
スタッフ教育で大切にしているのは、その子がどういう人間になるのかという部分です。だから美容室の教育は、営業以外の時間でどれだけ人間的な部分を育ててあげられるかが大切。それをしてあげられてさえいれば、現場で細かく言わなくてもちゃんとした仕事ができるんです。後輩と食事にも行きますよ。悩んでいるスタッフを連れ出して、私にも一緒に悩ませてと、アプローチしていますね。
正直言って今の若い人たちにとって、私はそんなに理想的なお手本ではないと思うんです。
私の真面目さやストイックに仕事と向き合う姿は、ときに若い人たちにとって「できるかな」とか、「そんなに大変なことをしたくない」というような、少しマイナスな気持ちを抱かせてしまうこともあると感じています。だから、私と同じようにやりなさいとは言わないようにしています。ただ1つでも、2つでも、私の背中を見て取り入れられるものがあれば取り入れてほしいなと思っています。
20年以上、このサロンにいる理由
ACQUA で働いてもう23年が経ちますが、無我夢中で駆け抜けてきたのであっという間でした。ここまでやってこれたのも純粋に美容師という仕事に対しての情熱と、ACQUA という環境に対しての愛情があったからだと思っています。
ACQUA だったからこそ今の自分があるので、オーナーや仲間との出会いに感謝したいですね。ACQUAそのものが自分の血でもあり、肉でもある。もっといえば、私自身であるようにも感じています。
「恩」という言葉では、なんだか軽すぎるようにも思いますが、この20年、私の存在がサロンの存続やこれからの未来に向けて役立っているのであれば、恩返ししていると言えるのかもしれません。でもそれはオーナーや、見ている人たちが決めてくれること。私はこれからも変わらず、ただうまくなるために、いい美容師になるために、導かれるままに美容の道を極めていけたらと思っています。
- プロフィール
-
ACQUA
クリエイティブディレクター/小村 順子(おむら じゅんこ)
美容業界を牽引する女性美容師の1人。圧倒的な技術と美意識からつくり出されるヘアスタイルは、お客さまから絶大な支持を得ている。サロンワーク以外にも、ヘアショーやセミナーなど幅広く活動。
(取材・文/福田 真木子 写真/河合 信幸)