トップサロンの看板を手放して、自分自身の魅力で――GOODTHING花見菜月さんの今までとこれから
昨年11月、8年半在籍していた都内有名サロンを離れ、伊藤竜さんの手がけるGOOD THINGに活動の拠点を移した花見菜月(はなみなつき)さん。
培われた技術によって生み出されるスタイルは、肩の力が抜けたラフな質感や、女性らしさが光る洗練された雰囲気で多くの方から支持を集めています。さらに、SNSで垣間見えるライフスタイルにも密かなファンが。
そんな花見さんは、ここまでどのような美容師人生を歩んできて、そしてなぜ今、GOOD THINGに在籍することになったのでしょうか。順風満帆にも見えるこれまでのヒストリーを、詳しくお話いただきました。
焦りからメンタルが不安定に……デビュー前後に過ごしたつらい時期
新卒で入社した有名サロンには、8年半在籍しました。トップサロンゆえに大変なことはたくさんありましたが、私はスタイリストデビュー前後の期間が精神的にも体力的にもきつかったですね。デビューするための技術や売り上げはクリアしていたのですが、ネックになったのがマインドの部分。当時は今と比べて、気分の上下が大きかったんです。会社にはそんな不安定さを見抜かれていて、「その状態でスタイリストには上げられないよ」と、デビューが先延ばしになっていました。
今思えば、その頃の不安定さというのは焦りからきていたのだと思います。美容師は常に新しいものを求めてトレンドとともに生きていかなければいけないし、それが移り変わるスピードはものすごく早い。自分は美容師としてなにが出来るんだろう…と考え込んでは焦ってしまって、どんどん気持ちが重く沈んでいきました。
でも、ヘアをやっている瞬間はすごく楽しいので、美容師自体を辞めたいと思ったことはないんです。入社から切磋琢磨してきた同期の存在も励みになっていましたね。
その状態を抜け出すきっかけになったのは、4年目にデビューが決まったこと。それと同時に、代官山の店舗に異動することになったんです。環境も大きく変わるし、仕事に対する姿勢や休日の過ごし方など、メンタルも健やかに過ごせるよう自分自身を見つめ直そう、と思って。目標にしていた同性のスタイリストに会って話したり、SNSを見たりして、自分のブランディングについても改めて考えました。自ら積極的に動いたことで少しずつ変化が起こって、色々なことが軌道に乗ったんです。
あの頃の経験を経て、今は気分が下がる前に自分で立て直すことができるようになりましたね。そういうときは影響力のある人の言葉や映画から刺激をもらうようにしているのですが、その中でも特に映画の『タイタニック』が好きで。悲しい結末を迎える映画ではありますが、見ると「人生って一度しかないし、人はどうせいつか死ぬんだから、やりたいことをやらないと!」と不思議と前向きな気持ちになれるんです。
美容師でいる以上、最先端のトレンドを求められることからは逃れられませんが、必死にインプットを続けていると、ちゃんとこれまでに吸収したものが発揮されるようになります。自分の見る目もどんどん育まれていきますし、お客さまからのアバウトなオーダーからも「オッケー、こういう感じだね」とイメージを汲み取って背中を押せるようになりました。
>美容師として大切にしているのは、「仕事の速さ」「かわいいヘア」「ゆったりとした物腰」