【金子史】有名大型店22年の勤務を経て華麗なる独立!東京タワーが見えるリュクスなサロンancrea Aoyamaは大型サロンとシェアサロンのいいとこ取り
今から20数年前の美容業界は、男性スタイリストが中心となって活躍する体育会系の世界でした。とりわけ東京・表参道エリアで群を抜く有名店は、日本の美容界を牽引する指折りのスタイリストが在籍し、過酷な練習と長時間労働は当たり前。そんな厳しい世界に挑戦し、スターダムにのし上がった女性美容師が金子史(かねこふみ)さんです。AFLOATにおいてアシスタントから着々とキャリアを積み、店舗代表、COO(最高執行責任者)まで歴任。そんな金子さんが在籍22年でそのポジションを捨て、青山にサロン『ancrea Aoyama(アンクレア青山)』をオープン。その出店までの経緯を聞きました。
独立願望はないままキャリアを積み重ねてきたけれど…
——もともと独立願望はなかったそうですが、出店を選択したきっかけは何でしたか?
それこそ、年を積み重ねてきたからこその気持ちの変化でしたね。顧客様と一緒に30代、40代になり、大型店ならではのエネルギッシュな空気感に違和感をもつお客さまが増えてきたんです。若いスタッフがどんどん入ってくるのは大型店のいい部分でもありますが、お店の雰囲気はお店全体で作っていくものなので、例えば会話の内容だったり、立ち居振る舞いが大人世代にとっては居心地に影響してくるんでしょうね。「私まだここに来ても大丈夫?」と不安そうなお客さまも出てきて、サロンを変える方もいらっしゃいました。私自身も、生涯美容師として働いていきたいと思っていた中で、そこでサロンワークをし続けていく未来がイメージできなくなっていったんです。
——それは大型店ならではのお悩みなんでしょうか。
そうですね。キャリア組の美容師にとっては、この悩みは避けられないかなと思います。お客さまが自分の技術を求めて来店してくださっても、お店の空気感は自分の力だけではどうにもならないんですね。かといって、キャリア組のスタイリストだけでお店を出してほしいという話でもないですし、そこが結構難しかったですね。会社としては若い世代にチャンスを与えたくて役職を前向きに任せていくわけですが、そうなるとキャリア組は気を遣ってしまって、後輩なのにアドバイス程度しかできなくなるんです。若い世代も先輩にいろいろと言えないでしょうし、その辺のコミュニケーションが滞ってしまいがちなんです。私はサロンワークが大好きですし、長く続けるためには独立が一番の選択かなと思いました。
——22年間在籍されてCOOという役職もあり、退社するのは大変だったのでは?
言葉に出してから2年くらいかかりましたね。お店をオープンするにあたって宮村さん(アフロート代表)をはじめ、いろんな方々からメーカーさんやディーラーさんを紹介していただき、親身になって協力してくれたんです。顧客様のために、店販もこれまでと変わりないように充実させたくて、最初の契約金はなかなか痛かったですけど(笑)。お客さまも目が肥えているので、そこは削れない部分でしたね。
——前職の代表が協力だなんて、いい辞め方をされたのでしょうね。ここの物件はすぐに見つかったんですか? 青山エリアは探すのが大変と聞きますが。
ご縁があって、友人からビルのオーナーを紹介していただいたんです。ここは新しい5階建てのビルで、1階はヴィーガンの飲食店、あとはすべて美容系サロンが入っています。低層エリアで眺めのいいところが気に入っています。いい場所が見つかって本当に良かったです。