日本開国の日。東京発「外国人美容師育成事業」がクールジャパンを加速! 外国人美容師の就労の一部解禁で日本の美容はどう変わる?

外国人美容師であるTAYAの尚海儀(ショウカイイ)さん、TAYAで外国人美容師の育成を担当する佐藤哲忠さん

 

日本では、美容師養成施設で規定の課程を修了すれば、国籍も関係なく誰でも美容師国家資格を受験できます。ところが、外国人が合法的に日本に滞在し、報酬をもらいながら仕事をすることを認める資格「在留資格(ビザ)」は、美容師を対象としていませんでした。つまり、外国人でも免許はもらえるのに、日本では働けないという矛盾があったのです。日本の美容を世界に誇っているのにもかかわらず鎖国しているような状態でした。

この問題の解決に向けて、日本の美容に関するクールジャパンの推進やインバウンドの需要への対応に向けた「国家戦略特区外国人美容師育成事業」がスタート。2022年10月1日より、東京都で外国人が美容師として就労可能(在留資格を最大5年間認める)になっています。

本事業初の外国人美容師であるTAYAの尚海儀(ショウカイイ)さん、外国人美容師の育成を担当する佐藤哲忠さん、そして実現に向けて尽力した東京都美容生活衛生同業組合(東京BA)の理事長を務める金内光信さんに、国内就労が実現したことに対する想いや、これからの展望について聞きました。

 


 

TAYAルミネ池袋店で頑張る尚海儀さんの日本で働く理由

 

まずは現場の声を聞くために「国家戦略特区外国人美容師育成事業」の第一弾として、日本で働くことになった尚(ショウ)さんと、育成担当の佐藤さんにインタビューしました。

 

 

編集部:尚さんが日本にきた理由を教えてください。

 

:父の仕事の関係で高校から日本に来ています。

 

編集部:美容師になった理由は?

 

:父が中国で美容室経営をしており、美容師の仕事ぶりをみて憧れたからです。また、母が東京のハリウッド美容専門学校の卒業生だったこともあり、高校卒業後に私も同じ学校で学びました。

 

編集部:専門学校卒業後はどこで働くつもりでしたか?

 

:中国に戻ろうかなと思っていましたが、先生から「東京で就職できるようになりますよ」と教えてもらったので、日本に残ることにしました。日本と中国では、やはり人気のヘアデザインもカラーも違います。日本で流行している美容技術に興味がありますし、日本流のサービスをもっと深く勉強してみたいと思ったからです。ちなみに、一年上の先輩は日本では就職できないので中国に戻りました。私はタイミングが良かったです。

 

 

「一掴みってどのくらいですか?」難しいのはコミュニケーション

 

編集部:受け入れる側の佐藤さん(佐藤哲忠さん)にも聞きたいのですが、外国人美容師さんに教える難しさはありますか?

 

佐藤:美容の技術はある意味、共通言語のようなものです。技術に関しては、問題なく習得してもらえると思います。難しいのは、コミュニケーションの部分ですね。たとえば、「ロッドを一掴み持ってきて」と言ったとき、尚さんに「一掴みってどのくらいですか?」と聞かれてハッとしました。スムーズな意思疎通のために、しっかり言葉を選んでいこうと思っています。

 

 

編集部:4月から少しずつ接客にも入っていると聞きましたが、尚さんはどんなお話をされていますか。

 

:まだちょっとドキドキするのでたくさんお話しできていないですが、「美容師になる前はどんなことしていましたか?」とか、私に話しかけてくださるお客さまもいます。

 

佐藤:尚さんが配属された池袋店は土地柄、お客さまに中国人の方もいらっしゃいますし、中国で仕事をしている日本人の方もいるので、彼女にとって共通の話題がたくさんあるんですよ。ただ、どちらかというと今は、接客よりも技術習得に集中してもらっています。シャンプーを始めとして技術の基礎を身につけてから、自信を持って接客にも入ってもらう予定です。就労できる期間も現在は5年と区切られているので、そこまでにしっかり美容師として1人前になってもらえるよう、カリキュラムを最適化して教育を進めています。

 

インバウンド需要が増大する中、母国語での接客が強みに

 

編集部:コロナも落ち着いて、街中に外国人観光客が溢れています。インバウンド需要を取り込む上でも、尚さんたちへの期待が大きいのでは?

 

 

佐藤:TAYAには尚さんのほか、中国人と韓国人の美容師を採用し、それぞれ池袋、銀座、吉祥寺で活躍しています。外国人の観光客が多いエリアですし、日本に住んでいる外国人の方が訪れるエリアでもあります。ですから、サロンに訪れたお客さまが、母国語で話しながら施術を受けられるのは大きな価値があるのです。多様性が求められる今の世の中で、外国人の美容師と研鑽できることは他のスタッフにとっても重要な意味があると思います。

 

編集部:そもそもTAYAさんが、外国人美容師の受け入れをする理由はなんなのでしょうか。

 

佐藤:会社の企業理念は「すべての人に夢と希望を与え社会に貢献する」です。外国人美容師育成事業が非常にリンクしていると思います。リスクもあり、大変な部分があるかもしれないけれど、日本の美容を世界に発信する上で、とても重要な役割を担わせてもらっている実感があります。言葉のギャップを埋めていけば、外国人美容師のみんなも、もっと楽しく働けるようになると思います。まずは尚さんたちの成長をしっかりサポートしていきたいです。

 

>誰でも資格取得できるのに、外国人だけ就労できない矛盾

 

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