TONI&GUY JAPAN 雑賀 英敏さんのびよう道 〜ロンドン仕込みの処世術 !Give&Giveで味方を増やしチャンスをものにする〜

 

美容室でも待遇や休日が大切と言われる時代。もちろんそれもいいですが、美容人生のどこかで“心も体も美容でいっぱい”という時期があってもよいかもしれません。

 

「びよう道(みち)」は、そんな地道で壮大な鍛錬の道を歩んできた“美容の哲人”に、修業時代に一人前になったと思った瞬間や美容の哲学など、それぞれの美容の道を語っていただく連載企画です。

 

今回はTONI&GUY JAPAN CEOの雑賀 英敏(さいが ひでとし)さん。文字通り世界のステージで成果を残し、世界40ヶ国 680店舗を展開するTONI&GUY グループの中でも最も重要な人物の一人です。

 

そんな雑賀さんのこれまでの歩みをうかがいました。人間関係に悩む美容師さんや、海外での活動に興味がある美容師さん必見です。

 


 

いつもハサミを持ち歩き、シェアハウスで切りまくる

 

僕がロンドンのTONI&GUYに入社したのは1997年、3月3日。ちょうどひな祭りの日だったからよく覚えています。同じ年の11月17日にスタイリストデビューしました。

 

当時のロンドンは、労働時間が短縮され、残業もできない空気だったんですね。サロンで練習できる日は、週1回の限られた時間だけ。全体の練習会はわずか月1回。「この練習量だと上に行けない」ということは肌で感じていたんです。

 

当時のロンドンは物価が高くて、誰でもどこでも髪を切れるというわけではありませんでした。僕はこれをチャンスだととらえて、学生や留学生、社会人になったばかりで余裕がない人たちの髪を切らせてもらったんです。いつもハサミを持ち歩き、シェアハウスなど遊びに行った先で切らせてもらう感じですね。

 

土日の夜はいきなり10人切ることになったりして、大変なこともあったんですが、遊びの延長でやれていたのがよかったと思います。それだけ切っていたら上達するからテストも受かるし、デビューも早まるというものです。

 

 

実際にいろんな人の髪を切らせてもらうなかで気づいたのは、バッサリ切らなくても喜ばれるということです。美容師は得手して大きく変化をつけたいと思いがちですが、お客さんのちょっとだけ切るは美容師の感覚と違うんです。1カ所切るだけでも、1mm切るだけでも喜んでもらえる。お客さんに寄り添う感覚を養うことができたと思います。

 

これは僕の持論なんですが、テンションを上げてガーッと修行に取り組むより、日常のモードでコツコツ積み上げていったほうがいい。じゃないと疲れて反動が出ますから。テンションを上げるのはイベント事の時だけでいい。普段は楽しみながら、平常心で続けることが大事だと思っています。

 

ニッチではなく、王道を攻めたから売れた

 

美容師として売れる前の段階で重要なのは、あまりニッチな領域を狙いすぎないこと。まずは、需要があって、なおかつ自分の「好き」とも重なるところにフォーカスするのがいいと思います。僕の場合は、『フレンズ』というドラマに出ていた、ジェニファー・アニストンのミディアムレイヤー。そのドラマが好きな外国人女性はみんな真似していたので、そこにフォーカスしたら集客ができるようになりました。

 

さらに、修行時代さまざまな人の髪を切りまくっていたおかげで、どんな髪質の人がきても、切れる状態になっていたから、次のチャレンジが生まれてきたんですよね。雑誌撮影の話も届くようになりました。ただ、恥ずかしながら自信がなくて最初の撮影は断ってしまいましたけれど…。

 

 

その一方で、いきなり舞い込んできたデモンストレーションの仕事を受けたこともあります。僕は積極的に講習をしている先輩について回っていました。その理由は、先輩の技術を学べるし、お昼ご飯をおごってもらえるから(笑)。突然、ステージでブローを任されたりすることもあり、見られることに慣れたし、度胸もつきました。

 

「しばらくは先輩のサポートが続くのかな?」と思っていたある日、講師役の先輩が2人同時に病欠で、担当できるのは僕しかないという事態がやってきたんです。しかも、授業が始まる前、30分でモデルも探さなきゃいけない。奇跡的に素敵なモデルさんが見つかり、午前は基本的なスタイル実践、午後はワークショップで生徒さんの指導という流れでやりきることができました。

 

「30分でモデルを探すなんて無理」と諦めていたら、教える仕事が自分に回ってくるのはかなり後になっていたと思います。

 

価値観が合わなくても、その人の長所と付き合う

 

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