下っ端のころの気持ちを、一生忘れない -ACQUA 綾小路竹千代さんの習慣 Vol.3-
-髪ではなく、心を切りましたー 1997年、日本武道館で行われたヘアショーのラストに、1万8000人の聴衆に向け、名言を残した綾小路竹千代(あやのこうじ たけちよ)さん。その“美容道”の一部を、日本の全美容師に向けて話してくれました。全3回でお届けします。
未来は僕の前にはない 未来は僕の後ろにある
僕は死ぬまで美容師を続けたいですが、若い人と比べればできる時間が限られています。これからの美容を背負っていくのは、間違いなく若い人たちです。僕の前に未来はありません。未来は僕の後ろにあります。アシスタントのみんなは美容界の宝。自分の子どもと同じだと思っています。
たくさんのお客さまの髪を切っていられるのは、アシスタントのみんながいるから。いつも「ありがとう」の気持ちを持って接していますね。下っ端の苦労もよく知っています。お金がなくて、お腹を空かせたこともありました。今の子たちも、忙しくてお昼ご飯を食べられないことがしょっちゅうです。
少しでもお腹の足しになればと、おにぎりを握ってバックヤードに置いておくこともあります。ちょっと空いた時間にパクパクっとつまめるように、一口サイズのものを月見団子みたいに並べておくんです。味付けは少し、塩を強めにしておく。そうすれば、汗をかくシャンプーマンの熱中症予防にもなるし、おかずがなくても食べやすいんですよ。
「よく頑張ってくれたからカツサンドを作っちゃおうかな」なんて、前の日にお昼のご馳走を仕込んでおくこともあります。そうやってアシスタントに愛情をかけているから、みんな「お客さまのために」って頑張ってくれますよ。