訪問美容の世界をリアルインタビュー! 現役美容師に聞いた業界事情とは
高齢の方や、病気・障がいといったさまざまな事情で美容室に通うことができないお客さまに理美容のサービスを提供する訪問・介護美容師の仕事。「超高齢化社会」と言われ、今後さらに高齢化が進むと言われている中で、社会的に注目を集めています。
美容師免許があれば訪問美容師として働くことが可能ですが、普段のサロンワークとはコミュニケーションや必要な技術も違ってきそう。そこで今回は訪問・介護美容業界で活躍する4名の美容師に取材を実施。訪問・介護美容業界で働くために学んだこと、一般のサロンワークとことなる点や、やりがいについてお聞きしました。
普段のサロンワークでも、今後は多様なお客さまへの対応スキルが必要になってくるはず。訪問・介護美容に興味のある美容師さんはもちろん、すべての美容師さん必見です!
<目次>
>ヘアメイク現場の経験をフル活用! 利用者さまに大きな明るさと豊かさを届けたい-UMiTOS 砂原由弥さん
>サロンワークと並行して始めた訪問美容。お客さまを「知る」ことで、心に寄り添う対応を。-trip salon un. 斉藤絵美さん
>誰かの人生の一コマに関われる仕事! 丁寧なカウンセリングでたくさんのお客さまを笑顔に-佐々木祐太さん
>お客さまの笑顔がやりがい! おしゃれを楽しんでもらうために真心のある施術を-訪問理美容きずな 中川佳世さん
ヘアメイク現場の経験をフル活用! 利用者さまに大きな明るさと豊かさを届けたい-UMiTOS 砂原由弥さん
UMiTOS 海と砂原美容室
代表/砂原由弥(すなはら よしみ)
2008年千葉県・南房総にて「海と砂原美容室」をオープン。2011年東京・表参道に「UMiTOS」をオープン。サロン活動に加え、有名芸能人のヘアメイクも数多く担当。ファッション誌、美容業界誌、CM、ドラマ、PV、広告、国内外の映画祭のほか、講師としてTV出演するなど多方面で活躍している。さらに、過去3冊の書籍を出版、G20大阪サミット2019にヘアメイクとして同行近年では慶應義塾大学特別講師を務めるなど、活動の場を広げる。認定福祉美容介護士、内閣府認定メンタルカウンセラーの資格を取得し、サロンワークではそのノウハウを活かした独自のカットメニューが人気。有名美容師でありながら、ヘアメイク活動も多岐にわたって行っており、芸能界と美容界をつなげる架け橋となっている。
訪問美容師になろうと思ったきっかけを教えてください。
都内のサロン勤務で休みが取れないほど忙しかったころのことです。私が小学生のときに、美容師だった母に老人ホームのボランティアに連れて行ってもらったことをふと思い出して。オーシャンビューの老人ホームで、利用者さまと美容師のみなさんが海を見ながら、ワイワイ楽しそうにカットしていたのが印象的だったんですよね。また、サロンのお客さまからも「寝たきりの母のカットを」とお願いされることもあったので、産休を機に認定福祉美容介護士の資格を取ろうと決意しました。
訪問美容師になるためにどのような勉強をされたのかを教えてください。
バイタルチェックや、入室の際の消毒方法、車椅子の押し方、ベッドの上でのシャンプーやカットの方法などを勉強しました。お客さまの移動に使える背負いのやり方、体の入れ方を学ぶための古武術もカリキュラムに含まれていたので、柔道の道場へ個人で赴いたりもしました。
一般的なサロンワークと異なる点はなんですか?
普通のサロンワークよりお客さまのケアをふまえて対応するので、身体の不調に注意したり、不測の事態にもすぐ対応したりできるように細やかな配慮が必要です。また、メンタル面でも、訪問美容を利用される方は一般の方より特にホスピタリティを必要とされます。なので、普段よりも大きなHAPPYをお届けできるように言葉のテンションに気をつけるなど、自分の心の姿勢にも向き合い続ける必要がありますね。
訪問美容師をしている中で印象に残っているエピソードを教えてください。
老人ホームに訪問した際、お孫さんや利用者さまご自身の若いときの話をたくさん伺えるんです。中には戦争のお話などもあり、そういった利用者さまの人生のエピソードはとても勉強になりました。話の流れで、ときには利用者さまから励ましていただくこともあって、そのときはお互いに泣けてきたりして…。人生の大先輩のお話を聞くと、元気になれますね。
仕事のやりがいは何ですか?
訪問美容は、その方のお歳にあったテイストでどれだけ素敵にできるかが腕の見せ所でありやりがいです。私は、例えば雑誌の『VOGUE』に掲載されていた白髪のデザイン感を取り入れたり、エッジのあるサイドを刈り上げたデザインやショートバングなどに、シャネルのおしゃれなリップを塗ったりして、個性をお出しすることを工夫しています。
訪問美容師に興味のある美容師さんにアドバイスをお願いします!
高齢化社会が進んでいることもありますし、自分の両親が歳をとったとき対応できるように、経験値を上げておく必要があると思います。私は雑誌のお仕事の依頼を受け、かっこいいミセスの女優さんのスタイリングをさせていただいたことがあるのですが、その際、訪問美容で利用者さまのために学んできたことがとても役に立ちました。社会をより豊かなものにしていくために、美容の視野を広く捉えられる方は、少しずつでも訪問・介護美容の準備をしてみてください。
>訪問美容専門サロンにて高齢のお客さま以外も担当するtrip salon un. 斉藤絵美さんが語る、訪問美容のやりがいとは?