びよう道 vol.23  NORA 広江一也さん 〜日本一忙しい美容室で過ごした波乱万丈の日々。理不尽で苦しい時間も、過ぎればおいしい話のネタだ。〜

 

美容室でも待遇や休日が大切と言われる時代。もちろんそれもいいですが、美容人生のどこかで“心も体も美容でいっぱい”という時期があってもよいかもしれません。

 

「びよう道(みち)」は、そんな地道で壮大な鍛錬の道を歩んできた“美容の哲人”に、修業時代に一人前になったと思った瞬間や美容の哲学など、それぞれの美容の道を語っていただく連載企画です。

 

第23回目は、株式会社NORA 代表取締役の広江一也(ひろえかずや)さん。カリスマ美容師ブームの火付け役となったヘアサロンで、売れっ子となり、店長などの要職を経て独立。NORAグループはアーティストとのコラボや海外出店でも注目される気鋭のヘアサロンです。今回は華やかな経歴の持ち主である広江さんの泥にまみれていた時代にフォーカスします。苦しい修行と向き合っている美容師さんにぜひ読んでいただきたいインタビューです。

 


 

建設業界から美容業界へ 日本一の美容室の社長に拾われる

 

 

僕は高校卒業後に大手ゼネコンで働いていたんです。会社は何千億円という規模の大きさで、あるとき「俺一人がいなくなってもなんの影響もないな」と思ったんですよね。「もっと自分の存在価値を感じられる仕事がしたい」と。当時の建設業は男社会だったので、華やかな世界への憧れもありました。

 

それで美容専門学校で学び直したのですが、在学中に知り合った美容師さんが「これから伸びる美容室が東京にあるから見にいったほうがいい」と。実際に行ってみると、そこには芸能人や、頭に刺青が入っている人、全身ピアスの人など、地元の奈良では見たことがない人がたくさんいました。これはすごいなと。それで面接を受けてみたら補欠合格。僕は合格した気になってしまい、アメリカに旅行に行っていたんです。旅行中に実家に連絡をすると、美容室から何度も電話があったようで、「前、アンタが受けた美容室の店長がめちゃくちゃ怒って連絡してきたよ」と。帰国後に連絡したら店長に「お前、いい加減しろよ!」と叱られました。しかも僕は次の面接も当然受かるものと思い、面接の前日、前祝いで友達と朝まで遊んでいたんです。面接は昼からなのに気づいたらもう夕方で、美容室に着いたのが夜の8時。店長に「お前か!舐めたヤツは!」といきなり叱られたんですが、偶然その場にいた社長が「こういうわけわかんないやつがいてもいいんじゃん。面接してやれよ」と言ってくれて。僕は社会人を経験しているし、口だけは上手かったので、面接では「アメリカに行ったのは感性を磨くためです」とかなんとか誤魔化しつつ、入社することができました。もし、あのときあの場所に社長がいなかったら、僕は面接してもらえなかったでしょうね。

 

>水を飲みにいく時間すらないので、シャンプー台のお湯でしのいだ

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