内田聡一郎のsoucutsラジオ vol.6 独立のためのリアルな3ヶ条
東京渋谷の美容室LECOのオーナー、内田聡一郎さんが若手美容師や美容学校生に向けて発信するsoucutsラジオ。サロンワーク、クリエティブ、経営、教育、ファッション、DJとマルチに活躍し、さまざまなことに出会ってきた内田さんだからこそのリアルでハッとさせられるトークが展開されています。若手美容師、美容学生をはじめ、ベテランスタイリストやオーナーなど、どのフェーズの人にも、きっと「気づき」があるコンテンツです。第6回のテーマは「独立のためのリアルな3ヶ条」。独立を夢見て頑張っているあなたに向けてのメッセージです!
貯金300万円が独立の目安
最近、SNSのDMなどで「独立するためにどんな準備が必要ですか」という質問が届くので、どんなことが大事だと考えているのかちょっと話してみたいと思います。
まず一つめ。貯金ですね、はい。これはもうめちゃくちゃ大事です。もちろんね、貯金ゼロから頑張った人もいるだろうし、1000万円以上の貯金がありましたっていう人もいます。僕は貯金と借りたお金で初期投資や運転資金を払いつつも、手元にお金を置いておきながらはじめることができました。これが安心感につながったんですよね。貯金がないまま、ハングリー精神丸出しでやったほうが頑張れる人もいるかもしれないけれど、僕は心配性なのでしっかり貯金して、手元にいくらあるのか考えながら経営するタイプです。
基本的には、独立までに300万円を貯めるのが一つの目安になるんじゃないかと思います。大体どのエリアでも300万円くらいの貯蓄があって、追加で借入れしていけばうまくいくんじゃないかと。僕の場合は、毎月5万円、収入が多い月はもっと入れて、3年から4年くらいかけて貯めました。独立に向けて、家賃や光熱費、交際費、食費なども見直して、自己管理をすることが経営の第一歩なんじゃないかなと思います。
サロンのコンセプトを整理して研ぎ澄ませ
2番目は、自分たちの得意な技術に特化し、追求すること。これは特に僕が渋谷エリアでサロンを経営しているから思っていることなんですけれど。今ってInstagramもそうだし、SNSなどでいろいろな技術を載せている美容師さんが多いと思います。売上をつくるために改めて、何を武器にするか明確にすべき。例えばエッジの効いたショートヘアのデザインとか、それを明確にするだけではなくて、スタッフにも浸透させて、どういう風に攻めていくのかコンセプトを整理することが大事です。僕の知り合いの美容師さんやオーナーさんもみんな口を揃えて言っていますけれど、たとえばカラーリングならその中でもハイトーン、そのハイトーンでもどこを尖らせていくのか突き詰めていかないと生き残っていけない世の中になってきていると思います。
成功話より、しくじり話が重要だ!
そして3つ目は、経験者の話を聞くこと。独立を考えている人は、経営者になるために成功者の本を読んだりすると思うんですが、基本的にポジティブな内容しか書いていないんですよね。でもどちらかというと「しくじり先生」的な話をオフラインで聞かせてもらうことのほうが大事だと思っていて。尊敬する先輩たちから、生々しいエピソードを聞かせてもらうことで、「順調に見える人も数々の失敗を乗り越えてきているんだ」ってわかるし、経営をリアルに感じられると思うんですよね。
経験者から失敗談を聞いておくと、自分が問題を抱えたときにトラブルシューティングしやすくなるのでぜひ実践してほしいです。以上、独立する上での準備としては、貯金と技術の追求、経験者の話の3つに集約できるんじゃないかと思いました。
人と人との筋を通せない人は成功できない
最初に3つと言いましたが、最後に4つ目、もう一つ大事なことがあったので話しておこうと思います。これは辞める前に仁義を通すことです。これが一番大事と言っても過言ではないかもしれない。今までお世話になった人にもう一度ちゃんと理解してもらって、応援してもらってやめましょうよ、ということ。僕はそれをめちゃくちゃ大事にしていて、お世話になっていたサロンのオーナーさんと今もすごく仲良くさせてもらっています。正直、これはオーナーさんの器も試されると言っていいかもしれない。
というのも最近、独立するときに揉めたり、辞めた後にトラブルが起こったりする話をよく聞きます。「あいつは応援できない」みたいに、オーナーと独立した人がお互いに文句を言い合っていたりとか結構あるなと思っていて…。でも、いろいろなオーナーさんもいることだし、一概には言えないですが、今独立しようと思える自分になれたのは、働くサロンがあったからだと思うんですよ。世話になった先輩や後輩もいるわけじゃないですか。不義理を絶対にしてはいけないですよ。
不義理で辞めた人って、絶対にうまくいかないと思っています。無茶苦茶なオーナーさんもいるかもしれないけれど、そこはオーナーさんの器が試されているかなと。僕自身はオーナーの立場で、誰かが独立するとなったときに器を試されることになるんだろうなと思っています。
そもそも残る選択肢がないのか考えてみるのもいいと思う。独立したら絶対に成功するとは限らないし、事実5年後、10年後になくなっているサロンがほとんどっていうのが現状だと思うので。そして、繰り返しになるけど、辞めるときは、きちんと筋を通して辞めるべきだと思います。という感じで、一番大事なんじゃないかと思うことを、クロージングの変わりに話させていただきました。今後も定期的に自分が話せる範囲で、等身大で、いろいろなことを話していきたいと思うので、気軽に相談を寄せてもらえると嬉しいです。以上、内田聡一郎でした。
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- プロフィール
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LECO代表 内田聡一郎(うちだ そういちろう)
2003年より原宿のサロンでトップディレクターとしてサロンワークをはじめ、一般誌、業界誌、セミナー、ヘアショー、著名人のヘアメイク、商品開発など様々な分野で活躍。
2018年 渋谷にLECOをオープン、2020年 セカンドブランドQUQUをオープン。代表として今後一層の活躍が期待されている。著書「自分の見つけ方」(2013年)、「内田流+αカット」(2017年)、「内田本」(2018年)を発売。また、シザーやシザーケースなどのオリジナルプロダクトも発売中。
2019年12月から若手美容師にエールを送るsoucutsラジオを始動。
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