「男性版顔立ちマップ」はメンズ美容革命の狼煙 資生堂ヘアメイクアップアーティスト・中村潤氏に聞く(前編)
2020年資生堂はパリメンズ・東京でコレクションのバックステージでヘアメイクチーフも務める中村潤さんを、メンズビューティーに特化したヘアメイクアップアーティストとして擁立し、資生堂メンズビューティーを強力に打ち出しはじめました。それを牽引する中村潤さんはどんな人物なのか、また、どんな武器を持ってメンズ美容に革命を起こそうとしているのかうかがいました。インタビューは前後編の2回。前編では、元サロンスタイリストでもある中村さんのこれまでの歩みにフォーカスします。
大阪の地域密着型サロンで美容師生活をスタート
2000年に美容師免許を取得し、専門学校卒業後は大阪の河内長野市にある地域密着型のヘアサロンで働いていました。今でこそ、そのサロンは大阪に20店舗展開していますが、当時は3店舗。しかも、自分が勤めていたのは比較的のどかな地域のお店だったので、自分が美容師としてどれほどの可能性があるのかわからず、漠然とした不安を抱いていたんです。
今はSNSなどを通じて、ほかのサロンの美容師さんと自分を比べることができますが、私の場合は比べる対象が身近にいる同僚や先輩しかいませんでした。実際には、そのヘアサロンの技術はレベルが高く、環境として申し分なかったのですが、当時の私はそのことを知る由もなかったのです。
「世の中全体で見たら、自分は仕事ができる人間なのだろうか」
そんな想いが強くなり、サロンの外でも学ぶ機会を求めて、セミナーにも通っていました。自分の力不足を感じることもあれば、意外と手が届きそうなレベルだった内容もあったので、セミナーに参加する度、安心したり、不安になったりを繰り返していましたね。そのような中、ヘアメイクアップアーティストを育成しているSABFAを知りました。
美容師とうどん屋のダブルワークで学費を稼ぐ
最初にSABFAを知ったときは、自分とはあまり関係ない場所だと思っていたんです。しかしながら、SABFAのヘアショーを無料で見られる機会があって、卒業生の森川丈二(gem)さんのステージを見て感動しました。その当時は、ただただ美しい芸術を見ているような感覚で、あまり身近には感じられていませんでしたが、ずっと頭の中に残っていたんです。
そしてあるとき、ふと考えました。「このまま美容師として経験を積むのと、ヘアメイクアップアーティストになるのでは、どちらが成長できるだろう」と。美容師なら店長になり、独立してという未来が思いつくけれど、ヘアメイクアップアーティストの世界は未知でした。だからこそチャレンジしたくなったのです。
SABFA の学費を貯める目的で、サロンワークが終わる22時過ぎから夜中の3時半くらいまでうどん屋でアルバイトをしました。お金が溜まるまでの1年半は、朝から夜中まで本当に働き詰めでしたね。ただ、ヘアサロンの仲間も、うどん屋の店長さんも、僕が夢を叶えるために稼いでいることを知っていたので、早くサロンを出られるように配慮してくれたり、まかないを家に持ち帰らせてくれたりなど、とても親切にしていただきました。今も感謝しています。