カリスマ時代を生きたNoz野沢道生氏に突撃! “違和感”さえ感じていた90年代の自分自身を振り返る
今から10年以上前に起こった空前のカリスマ美容師ブーム。とあるテレビドラマがきっかけとなり、こぞってメディアで取り上げられ、テレビで特集が組まれるほど美容師が注目されていた時代がありました。そんな中でひときわ注目を浴び、今も第一線で活躍している美容師、Noz CEO 野沢道生氏。
独立した直後に訪れた“超”特殊な時代。まさにその先頭を駆け抜けていた野沢氏自身の姿について、いま改めてここで語っていただきます。
ブーム到来の瞬間を“肌で感じた”そのとき。
-当時、カリスマ美容師ブームがきているという実感は美容師さんたちにあったのでしょうか?
「90年代に武道館でヘアショーを行ったときが美容師ブームの到来を肌で感じた瞬間でした。その武道館でのヘアショーを行う前からも、ヘア専門誌やファッション誌で取り上げられることはありましたが、あそこまで大きな舞台を用意されることはありませんでした。
満席の武道館を目の前にしたとき、本当に『美容師』というものが驚くほど注目されてきたんだなという感覚はありましたね。
その他にも、とあるライターさんが人気美容師を集めてヘアカタログを作ることになって。美容師をメインにしたヘアカタログを作ること自体初めての試みだったんですが、それに「カリスマ美容師大集合! 」みたいなタイトルをつけたんですよね。
そこから“カリスマ”という言葉がキャッチーだったこともあり、よく耳にしたり、言われるようになった気がしています。
しかし、自分の環境にそこまでの変化があったわけではないので『カリスマ』なんて呼ばれることに違和感は感じていたんですよ。
確かに美容師ブームと呼ばれるものの前から、僕にたくさんのファンがいてくれていたことは事実ですが、自分がカリスマだったか?というと、そういう実感はほとんどありません。テレビ番組が美容師を取り上げたりすることが増え、なんとなく僕の名前だけが一人歩きするような不思議な感覚でした」
“異常な環境”で育ったが、思いはアシスタントから変わらない
-美容師ブームの頃に一番感じていたことはどのようなことなのでしょうか?
「極端に言えば、あの頃は異常でした。僕もテレビ番組にはレギュラーで出ていたし、雑誌にも連載を持っていたり。今考えると全てがおかしなことばかりでしたよ。しかし、皆『タレント気取りになってはいない』ということは確かだったんです。
注目を浴びるほど余計に違和感や不思議な感覚が常に付きまとっていたんですよね。それでも純粋に感じていたのは『美容師』という職業が注目され、際立つようになったのは素敵なことだなと。
当時、高校生の間で『なりたい職業ランキング』で美容師は1位になっていましたし、世間から注目されるようになったこと自体は、仕事をしていく上で嬉しいことでした。でも、僕がメディアに露出する際には、必ず“裏テーマ”として掲げていたことがあったんですよね。
それは、従来の『切るだけ』で完成するヘアスタイルではなく、『デザインする』ことで、人を“キレイにする”ことも、“幸せにする”こともできるということを、少しでも多くの人に伝えることだったんです。
昔は『毛先を1センチでも切ればそれはカットです』という時代もあったんですよ。そうじゃくて、それを少しでも“(ヘアスタイルを)デザインすることが重要なんだ”という意識に変えたかったんです。その思いはアシスタントの頃から全く変わらなかったことですね。
一緒にメディアに取り上げられていた美容師さんを見て上手いと感じることも多かったし、どの人を見ても常に良い刺激があり勉強になりました。それに負けないように美容師同士、切磋琢磨し合える環境があったということが贅沢な時代だったなと思いますね。