英語がしゃべれるだけじゃ、外国のお客さまの心は掴めない! インバウンド需要の先にある美容師の未来―SHINKA 代表Ryoさん
28歳でシドニーに出店を果たし、海外への挑戦を形にしたSHINKA代表のRyoさん。シドニーに2店舗目を出店したのち、日本への逆輸入を成功させ、現在は都内に2店舗、シドニーに4店舗の美容室を展開しています。
さらに、SHINKAの日本店に訪れる外国人客の割合はなんと50%! そこで今回は、2020年の東京オリンピック開催による「インバウンド需要」が美容業界でも注目される今、外国人客へのアプローチをどのように成功させたのか、その理由をRyoさんに伺いました。
海外で活躍できる美容室の経営者になりたい! 10代からの夢を実現すべくスタートした海外出店の経緯とは?
僕、みんなが「いい」というものと違うものを選びたい性格なんです。小さいときから「それって新しいね」「個性的だね」って他者から評価されることが、自分の価値を高めていると考えていました。10代から描いていたプランは「30歳で美容室の経営者になる」こと。そのために高校時代から美容室でアルバイトしたり、簿記の勉強をしたりしていました。
ただ、美容室経営者の中でも、もっとオンリーワンの存在に近づきたかった。そう考えたときに「海外での活躍」ということを目標に加えたんです。
美容学校を卒業後、日本で4年間サロンワークに従事し、23歳のときにハワイへの出店を考えました。まずは、現地で美容室経営をしている唯一の日本人オーナーの元で働こうと思い、会いに行ったんです。けど、そのときその人はハワイの店を畳み、スポンサーをつけてオーストラリアのシドニーで出店することを計画していました。初対面だったのですが「もし興味あるんだったら一緒にシドニーでやってみないか?」と声をかけてもらい、その人の片腕として働くことを決意して24歳で渡豪しました。
ところが、スポンサーやデザイナーとのやりとりなどにかなりの時間がかかってしまい、その日本人オーナーが、「出資してくれるスポンサーを別に見つけたので、この話は辞退して別の場所で出店する!」と言って途中でいなくなってしまったんです。急遽、自分が雇われオーナーとなりオープンしたのは物件の賃貸契約をしてから約1年後でした。
お店のオープン後、環境や状況の変化もありスポンサーから「出店にかかった費用を物件の契約が終了するまでの4年で返済したらこのお店権利を譲ってあげる」と言われていました。しかし、約束通り返済が終わった4年後、「そんな契約の話あった?」と突然の決別。当時28歳の僕は、お店だけでなく、育てたスタッフ、お客さま、お金などいろんなものを失いました。
その後、シドニー在住の日本人弁護士さん経由で「経営がうまくいかず閉店する美容室がある。そこの賃貸契約書の権利を買わないか?」という話をいただきました。なけなしのお金でその美容室の賃貸契約書を購入し、つくったのがSHINNKAの1号店、ギャラリーズ店です。
実は閉店が決まっていたその美容室は、シドニー出店に僕を誘った日本人オーナーのお店で。知ったときはかなり驚きました。
1号店のオープン時は僕を合わせて美容師が2人、レセプショニスト1人でのスタート。しかし、僕はシドニーで美容師としての認知度がすでにあり、オープン前から「Ryoが新しく美容室やるんだって」という口コミが広がったんです。オープン1ヵ月で売上が350万円以上になったときは、とてもうれしかったですね。
日本への出店はインバウンド需要を意識したものではなかった
日本初出店となる六本木がオープンしたのは、2012年。すべてのスタッフが英語に精通し、SHINKAに海外でのノウハウがあったとはいえ、当時は東京オリンピックが決まっていなかったこともあり、「訪日外国人向けの美容室にする」という選択は僕の中にはありませんでした。ターゲットを、観光ではなく日本に住んでいる外国の方にしたから、六本木のエリアへ出店を決めたんです。昔に働いていた青山や原宿と比べても、六本木や麻布のほうが外資系企業や大使館が多いので、勤めている外国の方が多く住んでいるイメージがありますよね。
在日外国人のお客さまを集客するために、最初は近隣の全大使館に電話して「スタッフ全員、英語が堪能な美容室をつくるのでぜひ利用してほしい」と営業をしました。ただ、日本の方へのアプローチは優先的にしていなかったので、オープンから1ヵ月の売上は28万円。このままではまずいと思い、当初は予定していなかった日本の方にも集客サイトを使いながらアプローチをはじめました。
そこから徐々に、日本人と外国人ともにお客さまが増え、「OZmall」では2012年から毎年連続で口コミランキング1位をいただいています。シドニーでの経験から外国の方は口コミによる来店の割合が大きいことを知っていたので、アプローチを続ければ、着々と紹介が増えていくことはわかっていました。
あと、各大使館には日本に勤める方の生活をフォローする役割の人がいるんです。なので、その方がたに「東京ならここのサロンがいいですよ」と勧めてもらえたことも大きかったと思います。日本には六本木以外に、麻布十番にも美容室があるのですが、現在ではこの2店舗で訪日在日外国人のお客さまの割合は50%になりました。
>英語を使いこなすだけでは、心は掴めない! SHINKAが外国人に選ばれる理由とは?