SORA 北原義紀さんの“一番古い”お客さま—お客さまのひと言が、北原さんの美容人生を変えた
第一線で活躍し続ける美容師さんに古くからのお客さまをご紹介いただく、シリーズ「一番古いお客さま」。SORA 北原義紀(きたはらよしのり)さんがご紹介してくださったのは、北原さんの美容人生を変えたといっても過言ではないというファッションデザイナーのお客さま。
お互いが駆け出しのころに出会った2人は、10年以上のブランクを経て、10年前に再び美容師とお客さまの関係に。若かりしころのお互いの印象と、今、相手に思うこと。クリエイターの目線で語っていただきます。
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板倉慶二さん
お客さま歴:理容室時代3年間+SORAにて10年くらい
職業:THE KEIJI/ijiitデザイナー、株式会社イジット代表取締役
出会いは北原さんが理容室でシャンプーマンをしていたころ。
その後、2人はそれぞれのキャリアを歩み、
板倉さんは海外で展示会を開くほどのファッションデザイナーに、
北原さんは美容室の代表に。
10年以上のブランクを経て、10年前に再び美容師とお客さまの関係になったそう。
最近では板倉さんのブランド「ijiit」のルックブックのヘアはすべて北原さんが担当。
美容師とお客さまの枠を超え、チームとしての関係が生まれている。
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10年間のブランクを経て、美容師とお客さまの関係を超えた日
北原:板倉さんに初めて会ったのは、僕がまだ阿佐ヶ谷の理容室でシャンプーマンだったころですよね。板倉さんはフリーターで、先輩のお客さまでした。
板倉さん:フリーターって(笑)。ぷらぷらしていたわけじゃなくて、どうしても入りたい会社があって、そこへの就職活動中だったんですよ。
北原:そのころからおしゃれで、店のスタッフからも一目置かれている存在でした。ほとんどのお客さまがとにかく短く、すっきりと、というオーダーの中で、唯一切り抜きを持ってきていた人でしたし。
板倉さん:北原さんもお店の中でかなり目立っていましたよ。お店のユニフォームをデニムのシャツに変えさせたりしてさ。おもしろい奴だなと思っていたから、担当の人が退職した機会に北原さんに引き継いでもらったんだよね。
北原:あのときはうれしかったですよ! だって店長をはじめ、みんな板倉さんを担当したがっていましたから。それから僕がイギリスに行くまで3年間くらい担当させてもらったんですよね。
<本文つづき>
北原:実は板倉さんに聞きたいことがあって。僕がSORAをオープンして、また髪を切らせてもらうようになってからしばらくして、飲みにいったじゃないですか。そのときに「今のままじゃパリコレでのへアデザインなんかできないでしょ」って、僕に言いましたよね。
板倉さん:初めて一緒に飲みに行ったときだよね。
北原:そうです。しかもその1週間後にルックブックの撮影の電話をくれて…。確かに昔、「板倉さんのブランドがパリコレに出たときに、ヘアを担当したい」とは言いました。でもそのときの僕はいわゆる経営者になっていて、撮影とかクリエイションとか全然していなかった。板倉さんの指摘が図星だったんです。それなのになぜあのとき、あの言葉をかけてくれて、しかも撮影を依頼してくれたんですか?
板倉さん:なんか、感じたんだよね。今はクリエイティブから遠ざかっているかもしれない。でもきっかけさえあれば、必ず何かが起きるはずだって。
北原:あの言葉を言われた日から、僕の美容人生が変わったというか、活動の仕方やヘアのつくり方がすごく変わりました。
板倉さん:どんどん変わっていって、いろんなことにチャレンジしていく姿を見ているのは刺激になったよ。
北原:ルックブックもずっと担当させてもらっていますし。まさに今の僕の原点です。
板倉さん:僕の髪に欠かせない美容師さんであるだけじゃなくて、僕の仕事にとっても欠かせないチームの一員ですよね。
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