直感型オーナーの決断。サロンと植物販売を拡大する経営者のブレない考えの源―高円寺/menos石井和昭さん

 

美容室以外にアパレルや雑貨などの販売で事業を広げたい。そう考えているオーナーは多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は、1つのビルの中に3つの美容室を展開しながら、別の店舗で植物屋「芽の巣山」を経営するオーナーの石井和昭(いしいかずあき)さんのもとへ。石井さんはこれまで古本や生活雑貨、古着などさまざまな「もの」を美容室で販売してきました。そして現在は植物販売を美容室と切り離し、独立した店舗として経営しています。

 

物販をはじめたきっかけや「美容」と「植物」を完全に切り離した目的、さまざまなことに挑戦していく原動力とは何なのか。その理由を探ります。

 


 

物販をはじめたのは友人のおかげ

 

 

僕は、店をオープンしたときお金がなかったから、広告をかけられなかったんです。しかも、現在menosはビルの2階にふたつと、大通りに面した1階にひとつありますが、オープンした当初は2階に1店舗のみでした。そのため、中の様子がすぐ見える美容室ではありませんでした。

 

ものを売りはじめたのは、集客方法として「おもしろいんじゃないかな」と思ったから。たまたま古本と古着を取り扱っている友人がいて、「うちのお店で売ってみない?」って声をかけたことで実現しただけなんです。最初は古本、次は古着を売っていましたね。

 

向かいに人気のある輸入品のセレクトショップがあって、人の流れ自体は多い通りでしたから、外に服を掛けて、入り口に「OPEN」と書いて物販をやっているように見せたら、人が入り、認知してもらえると考えたんです。奥まで入ってはじめて「あ、ここって美容室なんだ」って。「あ! 間違えた」と驚かれるお客さまもいましたね(笑)。

 

当時は平日でも20人くらいが古本や古着などの物販を目的に来店していました。その中で後日、施術を受けるために来店してくださったお客さまも多かったです。13年以上前のことだけど、今でも僕が担当しているお客さまの約半分が当時からきてくださっている方たちです。

 

また、物販をはじめてから、お客さま以外にもいろんなおもしろい人がきてくれました。バイヤーさんだったり、アート本が好きな人だったり。その当時、知り合ってみたいと思っていた感性の人が、25歳の僕が選んだものを置くことできてくれた。予想外の効果でしたが、うれしかったですね。

 

勢いと直感で決断。植物販売のきっかけとは?

 

 

植物を販売しはじめたのは、2013年に3つめの店舗を増やしたとき。当時2階の2フロアで展開していたのですが、美容室に勢いがあり、スタッフはさらに増えつつありました。そんなとき、たまたま1階のフロアが空いたので、ギフトショップ兼美容室をやろうと思ったんです。

 

ギフトショップもつくろうと思ったのは、外から直接美容室だとわかるつくりに抵抗があったから。今まで美容室だとわかりづらいつくりにしてきて、それがmenosらしさになっていました。そのため、この店舗も入り口をセパレートにして、一見ギフトショップだけど奥に入ると美容室だとわかるつくりにしました。

 

そして、ギフトショップで何を販売しようかと考えたときに浮かんだのが植物だったんです。当時はすごく植物が好きだったわけじゃなかったし、植物の知識もあまりなかった。完全にそのときの勢いと直感でしたね。

 

ただ、いざ植物を売りはじめたら個性的な形や同じ品種でも個体差があるところにどんどん魅せられていきました。そのため、これまでの物販とは違い、植物は僕自身がコーディネーターになり、ブランディングやディレクションをしています。

 

>植物販売の拡大でわかった、同じ空間で売ることへの限界

 

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