【パワハラ】その教育で大丈夫? あなたが“パワハラ上司”になるかもしれない5つの瞬間

 

密なコミュニケーションが欠かせない美容室では、スタッフ同士の良好な人間関係をつくることがとても重要です。とはいえ、人間関係のトラブルはどこでも起こりうるもの。もし、それが自分の立場を利用したものだった場合「パワーハラスメント(以下、パワハラ)」になってしまいます!

 

そこで今回は、社会的な問題としても注目されている「パワハラ」についてご紹介。美容室の人事労務管理をサポートする社会保険労務士の右田一朗(みぎたいちろう)さんご協力のもと、サロン労働環境をみんなでつくるために注意すべきことをお届けします!

 


 

「パワハラ」になり得る行動や発言とは?

 

一般的に「パワハラ」というと、仕事のミスに対しての暴言や、残業の強要などを想像される人も多いのでは? 上司が部下を指導することは仕事のひとつですが、度を超えた行動や発言はパワハラになります。

 

「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為をいいます。パワハラの背景には、人間関係などで生じる職場内での力の差や、上司・部下といった上下関係があります。ただ、前述の『業務の適性な範囲』には明確な基準がありません。上司は部下を指導する任務があります。パワハラかどうかはそれぞれの状況によって判断されます」(右田さん)

そこで今回は、パワハラの可能性がある具体的な上司のタイプをご紹介します。自分の指導を見直す機会にしてみてはいかがでしょうか。

 

「酒が飲めないなんてダメ」はNG?【飲み会無理強いタイプ】

 

 

仕事とは関係ない飲み会を強要するケース。営業終了後の飲み会というのは仕事と関係ない時間です。仕事の会議ならば、わざわざお酒を飲む必要はありませんので、嫌がるほど強制してはいけません! さらに、「根暗」など相手を蔑む発言も避けましょう。

 

また、飲み会の席でお酒が飲めないスタッフに、「酒が飲めないなんてダメだ!もっと飲め」などと言い無理やり一気飲みをさせるなど、飲むことを強要するのも、パワハラの可能性あり! また、飲み会で上半身を脱ぐことを強制したり、二次会を辞退したスタッフに「お前が帰るのは10年早い」などと言ったりして、帰りたがっているスタッフを強引に参加させてはいけません。

 

「いじられていることを楽しんでいた」「嫌がっていなかった」というのは思い込みで、上司と部下の関係で断れなかったことも考えられます。こいった仕事と直接関係ない時間に上司から理不尽な強要をされては、部下からの信頼もガタ落ち! サロンの労働環境が悪化してしまうかもしれません。

 

教育担当失格なワードとは? 【侮辱・罵倒の感情論タイプ】

 

 

ノルマの数字が達成できなかったときなどに、他のスタッフがいる前で罵倒したり、侮辱したりするのはパワハラの可能性があり! 上司の個人的な感情で「給料を払わない」「おまえなんて辞めろ」などと言うのは教育者としてもNGです。

 

口頭でのシチュエーション以外にも、サロンスタッフ内のグループチャットでスタッフみんなにわかるよう、「〇〇は、何度言ってもできない、使えない」などと送るのも危険。メールやSNSで相手を傷つけた場合もパワハラに該当する可能性があります。もちろん、スタッフのいる前で見せしめのように「バカ」「アホ」などと言い、スタッフの人格を否定するのはもってのほかです。

 

特に学校を卒業したばかりのアシスタントは右も左もわからないもの。そんな新人に丁寧に教えることが上司の仕事とも言えます。ただ感情のまま怒っているだけでは、若手の育成にはなりませし、スタッフの離職原因になってしまうかも!

 

嫌がらせはサロンの運営上マイナスに! 【悪質いじめタイプ】

 

 

特定のスタッフをターゲットにし、孤立させたり、無視したりするといった、悪質ないじめのケース。悪いうわさを立てることや、その人だけ飲み会に誘わないなども、パワハラになる可能性があります。

 

こちらのケースは、「ミーティングの日時を教えてもらえない」「話しかけてもみんなに無視される」など、サロン全体での仲間外れや無視なども該当します。仕事に関係する情報を与えないことは、サロンの運営上マイナスにしかなりません! その他「目が小さいから周りが見えてないんじゃない?」などと、仕事と直接関係ない体の特徴を指摘し、侮辱した場合もパワハラになる可能性があります。

 

「あの子は仕事ができないから」などとスキルが低いこと理由に、いじめている自分たちは悪くない、などと正当化するのは勝手な意見。どんな事情があっても、無視したり、孤立させたりしてよい理由にはなりません!

 

能力を考えた教育とは? 【仕事量過剰・過小タイプ】

 

 

パワハラといえば、「過剰に仕事を与えること」を思い浮かべる人もいるのでは? 仕事の量に関するパワハラには、「いつもミスばかりするから、業務をやらせない」といった、仕事を与えない逆のケースもあるのです。

 

ただし、単に仕事量が多い、少ないだけではパワハラになるとは言えません。いじめが目的の指導はパワハラになる可能性があります。例えば、「サロンを任せられるようになってほしいから、他のスタッフより厳しく指導するよ」と上司から理由があり、同意している場合であれば、あなた自身もパワハラだと思わないはず。例えば「美容師免許資格がないからまだやらせられない」といった本人のスキルに応じた指導であれば、能力や条件を考慮していることとなります。

 

帰り際に、「今日中に在庫管理をしてほしい」と上司から声をかけられた経験は、一度や二度はあるかもしれません。このことが必ずしもパワハラになるわけではありません。ただ、教育しているスタッフのスキルや資格に関係なく、上司の感情で業務を押し付けたり、与えなかったりするのはパワハラになり得ます。在庫管理などの業務をしてほしい場合は、日中の時間があるときに指示をしたり、翌日でも可能なら、翌日やってもらうようにすること。急に無理な仕事を押し付けることはやめましょう。

 

「痛くないから」は理由にならない! 【身体的な攻撃型】

 

 

殴る、蹴る、叩くなどは指導の範囲を超えた行為です。暴力を奮うことは、犯罪。どんな理由があったとしても許されません! その他にも、わざと足をはらったり、胸ぐらを掴んだり、痛くないからとタオルを投げつけるのもNG。

 

多くの人は、個人的な感情で部下を指導しても、成長には繋がらないと考えているはず。頭ごなしに叱っては、せっかく採用したスタッフもすぐ辞めてしまいます。実際に暴力をふるう上司がいるサロンは少ないかもしれませんが、部下だからといって肉体的な傷を負わせていい理由はありません。

 

◆◆◆まとめ◆◆◆

 

自分には経験がなくても一度は見たり、聞いたりしたことがあったのでは? パワハラは組織で働いている美容師であれば誰にでも起こりうる問題といってもいいかもしれません。

 

「上司として部下を指導するのは任務です。大事なのは、人格や尊厳を侵害しないこと、業務の適正な範囲を超えないような指導をすることです。場合によっては、思わず声を大きく出して指導することもあろうかと思います。その際に気をつけたいのは、感情をコントロールすることです。場所と時間を変えてみたり、丁寧な言葉を使ったりして指導するように工夫をしてみてはいかがでしょうか。

 

パワハラでせっかく採用したスタッフが辞めてしまうと、結果として会社の人材の損失になってしまいます。その人を成長させたいと思って厳しく指導していても、度を超えてしまうとパワハラになる可能性がある。だからこそ、常にコミュニケーションを取り、部下のことを期待しているんだということがわかるように理由を話したり、部下にもわかるように丁寧に指導したりするなどして、怒りに任せないことが大切です」(右田さん)

 

ご紹介したような明らかにパワハラと取れる教育をする上司は少ないかもしれません。ですが、いつかは教育担当として、スタッフを指導する役割を担うはず。今からパワハラの知識を持つことが大切なのかもしれません。

 

プロフィール
社会保険労務士 右田事務所
代表/特定社会保険労務士 右田 一朗(みぎたいちろう)

大学卒業後、大手観光会社(鉄道会社)、大手外資系生命保険会社、メガバンクにて勤務後、独立開業。美容室専門の社会労務士事務所として、美容室の人事労務管理をサポートしている。趣味はゴルフとウォーキング。

http://migita-sr.com/

 

(取材・文/QJナビ編集部 イラスト/手ぶくろ星人)

 

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