オーガニックはパンクだ! 松浦美穂さんに聞く、サロンとオーガニックの心地よい関係づくり
「TWIGGY.」を立ち上げた25年も前から、「オーガニック」な信念を軸として、パーソナルなトータルビューティーを提案してきた松浦美穂(まつうらみほ)さん。「オーガニックが好き」というお客さまが増えた今、改めて美容師の仕事とオーガニックの関係性について、松浦さんに語っていただきました。ヘアカラーやパーマを諦めることなく、お客さまに健康的な美しさを提案することはできるのでしょうか? そして「オーガニックはパンク」と話す、その真意とは?
本当に、オーガニックと美容室は相容れない?
TWIGGY.を立ち上げた25年前は、日本に「オーガニック」という言葉すらありませんでした。有機栽培とか無農薬という言葉も、あまり聞くことがなかったのではないでしょうか。それが今は食べ物でもコスメでも「オーガニック」というキーワードを、いたるところで見かけるようになりました。美容師が扱うプロダクツもそうですね。
でも実際、美容師が扱うプロダクツの中に、純粋にオーガニックと呼べるものはそう多くありません。植物由来の成分は入っているけれど、ケミカルベースのものも多いです。そういった製品に囲まれて、「オーガニック」というワードに対して半信半疑になっている人も多いと思います。「そもそも美容とオーガニックは相容れない」と、感じている人もいるかもしれません。
確かに「安価で、明日すぐに結果が出る物を」という従来の美容が目指してきた価値観と、オーガニックは相容れません。なぜなら私が目指してきたオーガニックな美容とは、高くて、手間がかかって、結果が出るまでに時間がかかる美容だからです。人間が愛を持って育んだ植物の力を享受して、人と髪の本来の美しさを引き出すこと。そしてそれを選択することで、植物を育む土や水、地球環境にリターンをもたらせるものこそが、オーガニックな美容だと考えています。
楽チン美容に抗うこと。だからオーガニックはパンクなんです!
今の時代、何も考えずに生活し、すぐに手に入るものを食べていると、人はどんどん不健康になっていってしまいます。髪や頭皮も同じこと。これまでやっていたことに疑問を持たずに同じことを繰り返していたら、髪や頭皮、ひいてはお客さまの健康を損なっているかもしれません。
オーガニックとはそのような今まで当然で、便利とされていたことを改めて見直し、それに逆行してでも本物の健康的な美しさを手に入れようという精神です。だから私は「オーガニックこそパンクだ」と感じています。パンクとは、反骨精神という意味ですよね。楽チンで、すぐに結果が出て、みんながやっていることに抗って、時間やお金がかかっても本当の意味での美しさを手に入れようとする姿勢は、まさにパンク。貫くのは大変ですが、それだけの価値があるものだと感じています。
大切なのは考え方や感性なんですよね。だから、ヘアカラーやパーマといったケミカルメニューがあるからといって「美容室でオーガニックは無理」なんて、諦めないでほしいです。
オーガニックに少しでも関心がある人は、まずは「オーガニックから何を得たいか、何が得られるのか」をきちんと知ることをはじめてください。その本質さえ理解できていれば、どんなサロンで働いていても、使うプロダクツはもちろんのこと、自分自身の生き方や、お客さまに届ける情報も、自分の判断で選べるようになると思います。
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