いざ独立、店舗はどうする? マンションの一室から始める美容室創業
いつかは独立したいと思っているあなた、貯金はどのくらいしていますか? 一般的に美容室を開業するには500万円〜3,000万円の資金が必要だと言われています。幅があるのは店舗の立地、規模、内装によって必要資金が異なるから。もちろん融資を受けるなどして資金を調達するわけですが、それでも少し気後れしてしまう人もいるのではないでしょうか。
開業資金を抑える選択肢のひとつとして、今回はマンションの一室から独立後のキャリアをスタートするという方法を掘り下げます。うかがったのは、東京・新宿のとあるマンションの一室を借りて開業し、9年目を迎える『Onelove Cut’s』の神田晋介(かんだしんすけ)さん。マンションで美容室を開業する方法と、そのメリットデメリットを聞きました。
部屋を見て、「無理です」と言って帰りました
-なぜマンションの部屋を借りて開業することにしたのですか?
実は独立を考え始めた時点では、マンションの一室でやるとか、テナントを借りてやるとか、何も決めていませんでした。たまたま通っていたタトゥースタジオのオーナーさんに紹介された物件がここだったんです。でも初めてここにきたときは、「100%ありえない」と思いました。それで速攻「無理です」と言って、帰ったんですよ。
-無理だと思った理由は?
駅からやや離れていたし、マンションの5階だし、しかも和室だったんです。僕はそれまで路面店にしか勤めたことがなかったですし、当時は集客用のウェブサイトなどもなく、集客のノウハウも持っていませんでしたから。
-だけど、ここでやってみることにしたんですね。どのような心境の変化があったのですか。
独立しようと思った発端は、給料への不満からでした。でもこの物件を見にきた頃には給料も上がってきていて、さほど不満はなくなっていたんです。だから見に行ったその日は、まぁいいやと思っちゃったんだと思います。でもその一方で16歳から働き始めたサロンでデビューして、22歳になって……このままでいいのかなという気持ちもありました。だからどういう場所でもいいから、とにかくやってみようかなと。一度「無理です」と断ってから2週間後、気まずかったのですが、直接やると言いに行きました。僕は想像もつかない、わけもわからない環境に飛び込んでみたかったんです。
-いま9年目ということですが、やってみていかがでしたか。
後悔はないですね。というか、幸せです。
うちはもう一人スタイリストがいるのですが、基本的にマンツーマンのスタイルで営業をしています。だからお客さまと一人ひとりとちゃんと向き合える環境ですし、単純にやったらやっただけ報酬を得られます。
メリット、デメリットを全身で受け止められる。こういうスタイルが僕には合っていたんだと思います。
-プライベートに近い空間で、一対一で接客してもらえるサロン。お客さまの反応はいかがですか。
プライベートに近い空間だからこそ、お客さまが本音を言いやすいように感じます。挑戦してみたいスタイルや、髪の悩みを相談されることが増えました。やっぱり大きいサロンで人目がたくさんあると、少し気恥ずかしかったりするんでしょうね。