彼女たちのヘアスタイルは女性たちの生き方まで変えた! 時代を彩ったショートカット・アイコン
いまも昔もアイコンたちは女性たちの憧れであり、ファッションやヘアスタイルに多大な影響を与えてきました。たとえば、ある女優が映画のなかでロングヘアをショートカットにしたら、若い女性たちが真似をしようと美容室に駆け込んだ、なんてエピソードもあるほどです。
今回はオードリー・ヘプバーン、ジーン・セバーグ、ミア・ファローそしてオドレイ・トトゥの4人のショートカット・アイコンを、映画ライターの清藤秀人さんが紹介します。彼女たちの影響力を通じて、ショートカットの歴史も学んでみましょう。
オードリー・ヘプバーン
若い女性たちはオードリーのようになりたくてショートカットに
1950年代に日本でも大流行したヘアスタイルと言えばヘプバーンカット。「ローマの休日」(53)で宮殿を抜け出したオードリー・ヘプバーン演じる王女、アンが、ふと立ち寄った美容室で自慢のロングヘアをバッサリ! そしてでき上がったのが、フロントはストレートバング、サイドは後ろに流して、バックを襟足ギリギリまでカットした軽やかなヘアスタイル。当時の美容室には映画を見た若い女性たちが押しかけ、王女になった気持ちでイメチェンを楽しんだとか。映画のようにフロントに櫛を入れてセンター分けにする等、その日の気分で雰囲気を変えられるし、オードリー並みに小顔に見えるところが、このカットが愛された理由かも知れない。
ジーン・セバーグ
セシルカットというヘアネームを生み出した伝説的なアイコン
ヘプバーンカットよりナチュラルで、その後のショートカットの基礎を築いたとも言われるのがセシルカット。「フランソワーズ・サガンの悲しみよこんにちは」(58)でジーン・セバーグ演じるブルジョワ娘のセシルがトレードマークにしていたところから、そう名付けられた。ブロンドの前髪は同じ長さで斜めに流し、全体は骨格に沿ってタイトに仕上げる。パリの夜、ジバンシーのファンシーなリトルブラックドレスにも、フレンチリビエラの海岸でショットパンツにもマッチしてしまうセシルカット。まさに万能のショートカットがこれ。サイドは短くツンツンに立たせているから、ボーダーシャツを着るとまるで少年のようにも見える。カット技術がモノを言うヘアスタイルだ。
ミア・ファロー
ショートカットが映えるファッションセンスは抜群だった
同じくショートヘアの代名詞はミア・ファロー。出世作「ローズマリーの赤ちゃん」(68)を皮切りに、独特の癖っ毛をそのまま生かした自然なスタイリングでその後の数作を押し通した彼女。短く切り揃えた前髪と緩やかにカーブを描く眉毛の組み合わせや、ショートヘアにぴったりなパールイヤリングのチョイスはどちらも絶妙だったし、丸襟のガーリーなミニドレスを着た場合でも、ベリーショートだから過度に女の子っぽくならない等、ハリウッド女優としては珍しくトータルコーデに長けていた人だった。顔のソバカスすらヘアにマッチして個性の1つになっていたのだから。
オドレイ・トトゥ
癖っ毛をうまく活かしてチャーミングなショートカットを生み出した
ミア・ファロー以上に、癖っ毛女性にとっての強い味方はオドレイ・トトゥ。ミニシアターの興収記録を打ち立てたスマッシュヒット「アメリ」(01)で空想好きのヒロインを演じたオドレイは、冒頭からブルネットの癖っ毛を乱暴に(そう見えるだけ)カットしたショートヘアで女性観客を魅了しまくり。結果、各地の美容室ではアメリ風フレンチショートカットをオーダーするお客さまが続出。そこで、美容師たちはころんとしたショートバングや所々に跳ね感やぶつ切り感を多用して彼女たちの注文に応えようとした。要は、癖っ毛を逆手にとったヒットアイテム、それがアメリカットだったのだ。
1950 年代から現在にかけて活躍するショートカット・アイコン4人を紹介しました。昔から、アイコンたちのヘアスタイルが世界中の女性たちの心を動かし、“女子の変身願望”を満たそうと美容室へ通わせていたんですね。特にショートカットは、印象が劇的にチェンジするから、思い切ってトライしてみたいスタイルとしては代表的。ショートカットの魅力を改めて考えてみてはいかがでしょうか?
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(文/清藤 秀人)