「スタッフが幸せなら、儲けは勝手に付いてくる」カラー専門店をオープンしたapish坂巻哲也さんの経営論
美容業界で圧倒的な存在感を発揮するapish代表の坂巻哲也(さかまき てつや)さんが、2015年1月にオープンさせたのが、カラー専門店「apish COLOR TERRACE」。
前髪カットとカラー、トリートメントのみを行なうこちらのサロン。でもなぜカラー専門店を開いたのでしょうか? そこで店舗展開をするうえでの経営戦略について詳しく聞いてきました。経営に悩むオーナーのみなさん、必読です。
COLOR TERRACEは“スタッフが輝くための学校”
-カラー専門店apish COLOR TERRACE(以下、COLOR TERRACE)では、どんなメニューを提供しているんですか?
ヘアカラー・トリートメント・前髪カット・ブロー・セット・キッズカットのみを行なっています。apishよりも単価をお手頃な価格に設定し、ブリーチなどやデザインカラーは行なっておりません。ヘアカラーの場合、シャンプーまで終わったら、あとはお客さまご自身でのセルフドライ・スタイリングをお願いしています。
-なぜ他店舗と異なるコンセプトのCOLOR TERRACEをオープンさせたのでしょう?
ここは儲けを出すためではなくて、スタッフのために作った店舗なんです。理由は主に2つあります。1つは、ママ美容師が復帰する際に、働きやすい環境を提供するため。apishは社員の定着率が高く、15年以上勤めてくれているスタッフが大勢います。女性の多くは結婚・出産というライフイベントを経験し、1年ほどの育休期間ののち復帰するんですが、休んでいた間に流行がわからなくなり、ハサミを持つのが不安になってしまうんです。でも、COLOR TERRACEは最新のスタイルを追いかけなくてもいいし、指名制がないので休みも自由にとれる。ママさん美容師が罪悪感を持たずに働ける環境を作りたかったので、子供の病気などで休みたいとき対応できるよう、休みを気軽に取れる体制を作りました。
2つめは、アシスタントの子たちが接客の力を身に付けるため。最近は、アシスタントがデビューするまでの期間が6~7年と長くなっています。なぜかと言うと、美容師とお客さまの平均年齢の差が開いてしまったから。僕がスタイリストになった年は、美容師の平均年齢が27~30歳に対して、女性客の平均年齢が約36歳。今は、美容師が27~30歳に対して、女性客の平均が47~48歳。美容師の年齢は変わらないのに、お客さまの年齢が10歳も上がってしまった。自分よりも20歳近く年上の方のヘアをプロデュースするのは非常に難しく、技術力だけではファンになってもらえないんです。そのために、ここで人間力を鍛えて、お客さまの心をキャッチする訓練をしてもらう。いわば、COLOR TERRACEは“社員が輝ける未来を築くための学校”のようなところですね。
-低価格ということで、『品質やサービスを落としたのでは?』との声もあるかと思いますが、実際はどうなんでしょうか?
まったくそんなことはありません。apishの初級技術者のカットが大体1時間で6000円に対して、COLOR TERRACEのカラーは30~40分で、約3000〜4000円。10分1000円という技術料金は同じです。もちろん、薬剤などもapishと同じものを使っています。安売り店ではないのです。
-場所が神奈川県川崎市。なぜ銀座や青山のようなトレンドの中心地でない場所にオープンされたんですか?
apishにきてくださるお客さまの居住地を振り分けたら、比較的、神奈川方面のお客さまが多かったからですね。
-どんなお客さまが来店されるんですか?
平均年齢は50歳前後で、apishよりも高いですね。ほとんどが女性のお客さまで、白髪染めの施術が約80%を占めています。