「暗くてネガティブで面倒な人だった」air木村直人さんが変わった瞬間。ヘアライター佐藤友美がみた “美容師列伝” 第2回 「見つけた人」
新連載「ヘアライター佐藤友美がみた 美容師列伝」。日本全国の美容師を取材してきたヘアライターの目線から、毎回「●●な人」を紹介し、その素顔に迫る新企画です。
第2回めは「見つけた人」。airの木村直人さんです。(文中、木村さんの敬称を略させていただきました)
印象は「暗くてネガティブで面倒な人」
2011年以降の木村さんしか知らない人は、驚くかもしれないけれど、ファッション誌のライターから見た木村さんは、正直、「暗くてネガティブで面倒な人」ってイメージでした。いや、ファッション誌のライターという言い方は卑怯だな。「私にとってのキム」は、2011年まで「美容師さんにしてはめずらしく、暗くてネガティブで面倒な人」、でした。
あれは多分、2008年の何かの雑誌の忘年会だったと思うけれど、「いや〜、俺、医者からタバコとめられてるんですよね」と言いながら、すぱすぱタバコを吸っていたのが、キムだった。
「ゆみさん、相談したいことあるのでお時間もらえますか?」と言われたので飲みに行ったら(忘れもしない、表参道交差点の「鳥吉」のカウンターだった)、どれだけ仕事が忙しくて休む暇がないか、だから本当は気胸? の疑いがあるんだけれど、休んだらチャンスを逃すかもしれないから病院にも行けないのだとか、身を粉にして働いているんだけどやっぱり朝日さん(airプロデューサーの朝日光輝さん)の背中はとても遠くて、でも病気を抱えているからいつ倒れるかわからない、みたいなことを延々語られました。
そしてやっぱり、「医者からとめられてるんですよね」と言いながら、タバコをスパスパ吸ってた。
当時私は1日4箱吸ってたタバコをやめて禁煙に成功したばっかりだったので(ついでにいうと、禁煙したら13キロも太ってイライラしてた)、「この人、バカじゃないか」と率直に思ったし、私は思ったことを口にせずにはいられない性格なので、多分、本人にも率直に言ったと思う。「あのさ、そういう愚痴ってすごくバカに見えるよ。さっさと禁煙して、病院いって、身体直してから仕事に取り組みなよ。いつ倒れるかわからないような人と、誰も仕事したくないよ」って。
それだけじゃなく「朝日さんは、そんな愚痴を言ったりしないよ。どんなにいい仕事してても、それじゃ評価されないよ」って、傷口に塩を塗るようなことを言って別れた。
当時私は本気で、「表舞台に立っている人には、表舞台に立つだけの資格がいる」と思っていたんだと思う。タレントが水面下のバタ足を見せてどーする、と思ってたし、しかも「くすぶりは感染する」と思っていたので、そのあと、キムとはあまり会わないようにしていた。
そうこうしているうちに時は流れて___。
2011年。キムは本当に倒れた。
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