常識にとらわれず、感性を磨き続ける
一九八五年に創業、現在は愛知県と福岡県に十一店舗を展開するビーズは、地域では老舗のサロンの一つだ。そんな同店に大きな変革が起こったのが二〇二一年五月。グループのホールディングス化に伴い、創業者である前代表に代わって代表に就いたのが、中途入社九年目になる細野尊史だった。細野とビーズの出合いは、前代表が以前勤めていたサロンの顧問だったことから。
「もっと自由な環境でやりたい」という細野がビーズに移籍することに。その後の評価で、経営を任されるまでになった。自らを破天荒経営者と名乗る同氏は、常識にとらわれないことをモットーとしている。
「新人には最初に、『先輩の言うことは聞かなくていい』という話をします。一昔前とは世の中の常識が変わっている中で、先輩の言うことが絶対に正しいとは言い切れませんからね。もしも、変だな?と思うことがあれば、どんどん自分の意見を言ってほしい。もちろんそれは、僕
に対しても同じです。既存の考えややり方に疑問を持つことから、新しいサービスや商品が生まれることもありますしね。また時代の変化に敏感になり、感性を磨き続けることは、美容師として大切な要素の一つでもあります」
自分の強みを活かした、副業をライフワークに
もちろんビーズには、これまで五十名以上の独立オーナーを輩出してきたサロンとして、美容師としての技術や、経営者としての考え方をしっかりと教える仕組みもある。それに加えて新代表となった細野は、これからの美容師には、また別のことも期待している。
「美容師の仕事の魅力については、僕が語るまでもないでしょう。でも、一生美容師だけでいいのか…と言われたら、それももったいない。これから社会人になる人は、ぜひ自分のライフワークになるような副業も見つけてほしいですね。もちろん、美容の世界で技術を追求したいというのも、いいと思います」
実際に同店では、美容師をしながらYouTubeの動画編集をしたり、カメラが好きで撮影にこだわったり、店舗によっては紳士服や時計の販売をしているところもあるという。
「僕自身、お客様に頼まれて、車を探してきて販売したこともあります(笑)。一人ひとりいろんな個性や強みがあっていい。美容院という枠に縛られる必要もありません。常にいろいろなところにアンテナを張っておいて、チャンスが来たらすぐに動けるような準備はしておくといいですよね。個人ではなかなかできないことでも、会社の経費や場所を使えばできることもある。最近では、従業員から沖縄に店舗を出したいという話が出て、今、前代表が土地を探してくれています」
目指すは、従業員家族満足!家族にも応援されるサロンに
そんな細野のもとには、自然と個性豊かな仲間が集まってくる。中には「他の店では通用しないだろう」と思われるタイプもいるとか。それも全部受け入れるのが細野流だ。
「僕がこういう考え方だからか、自分が管理していた店舗では、お陰様でここ五年くらい、仕事や店がイヤで辞めていった人はいません」
その一方で、そんな細野でも従業員を叱ることはある。
「自分で立てた目標に対して、達成できたかどうかは問題にしません。ただ達成に向けて、努力しないのはダメですね」
とはいえ代表就任一年目だ。これからの展望についても聞いてみた。
「売上や店舗数については、結果でしかないのでこだわりません。それよりも目指したいのは、『従業員家族満足度』の高い会社!従業員満足度はもう古い。従業員の家族が辞めさせたくない会社っていい会社だと思いませんか?」
自分自身がチャレンジしている姿を見せることで、若い人たちにもワクワクした日々を過ごしてほしいと語る細野。その言葉を聞くだけで、何だかこちらまで、ワクワクした気持ちになってくる。