「ロイヤルカスタマー」の存在

未曾有の大災害、新型コロナウイルス。美容業界へ大打撃を与えるなかでも、創業から二十三年間、右肩上がりに成長し続けるサロンがある。大阪の堺・狭山エリアでトータルビューティサロンを展開するアパカバールだ。今年も例年通りに新卒採用を強化し、今年は二十六名、来年は四十名の大型採用を目指す。

数多くのサロンが成長を鈍化させるなか、なぜアパカバールの成長は止まらないのか。中野は強さの秘けつを語り始めた。

「ロイヤルカスタマーの存在だね。私たちの技術やサービスに愛着や信頼を感じて、長くご愛顧いただけるお客様のこと。やっぱり新規集客ばかりに重点を置いても、それって自転車操業でしょ？ましてや人口が減っていくなか、離れては集客、離れては集客の繰り返しでは未来がない」

固定客のリピート率は驚異の九十％超え。ライバルサロンも数多くあるなか、簡単にお客様が離れてしまう時代。なぜ顧客の心を掴んで離さないのか。

「高単価・高付加価値・教育型のトータルビューティサロン。それがアパカバールのコンセプト。要は顧客接点の数と質を重要視しているんです。どんな美容にも対応してくれる。さらに、技術のレベルまで高い。となったら、離れる理由はないですよね？」

さらに驚くべきが、顧客だけでなく、美容師たちも離れないこと。ここ五年間の新卒在職率は八十％を超え、次から次へと次世代美容師が生まれている。

「アパカバールを選んでくれた社員こそ最大の顧客であり、社員満足なくして顧客満足はなし。彼らのために働きやすい環境づくりに努めるのが私の役目なんです。職種の選択肢を設け、専任・兼任で自分らしい美容師像を叶えられるし、もちろんキャリアだって自由。役員、独立、家庭との両立など豊富な選択肢から、自分らしい美容師人生を描けますよ」

美容の本質を追求し、提案するビューティーフィッターの価値

「そもそも美容とは何か。肌、健康、スタイル、食べ物。人によって色んな考え方がありますよね？特にSNS が日常にある今、様々な美容情報が行き交い、お客様の興味もニーズも多様化しています。だったら、美容室はヘア、ネイル、アイだけを扱う場所でいいの？ってこと。頭のてっぺんから足の爪先まで、お客様のライフスタイルすべてをコーディネートする場所、それが本当の“美容”室なのではないでしょうか？」

美容の本質を追求する。それが次世代美容師に求められるもの。そこでアパカバールでは今年から新たに「ビューティーフィッター」というライセンス制度を設けた。

「美容師は“髪を切る”という能力が必要ですが、それだけでは本当の“美容”師とは言えない時代になっていくでしょう。ビューティーフィッターの研修では“似合わせる”提案を軸に、ヘアや
メイク、ファッション、インナービューティーなど様々な提案スキルを習得し、指名され続けるプロを目指してもらいます。ビューティーフィッターという付加価値を身に付け、どんな美容の要望にもお応えできるスペシャリストへ。これまでの美容師の枠を超えることこそ、ロイヤルカスタマーづくりへの近道なんです」

人生は長距離走　長い目で人生設計を

最後に中野は次世代美容師に向けてこう締めくくる、「人生は長距離走だ」と。

「人生百年時代。百歳まで生きるとしたら、どんな人生を想像しますか？ 目先の利益や楽だけを取りに行き、将来に不安を覚えるのか。着実にキャリアを積み、長期で安定した美容師人生を送るのか。あなたの“好き”を仕事にし続けるには、長い目で人生設計しないとね。アパカバールでは職種やキャリアの選択肢に加え、ライフプランニングの勉強会を開くなど本気で社員の将来を考えています。『社員は家族』をテーマに、これからもどんどん改革を行っていきますよ」

目指すのは、社員にとって働きやすく、長く勤められる会社。社員の未来を作るため、中野は進化を止めない。