DaB澤野さんに聞く! 大物になるスタイリストに共通する習慣とは?
数々の有名スタイリストを輩出してきたDaB。美容業界でも一目置かれるヘアサロンのひとつです。大物美容師がどのようにして生まれるのか、そしてどんなスタッフ教育をしているのか、興味関心を抱いている美容師も多いはず。そこで、クリエイティブディレクターの澤野秀樹さんに、伸びる美容師、大物になる美容師の共通点や習慣を伺いました。
デザインあってのテクニック。技術は後からいくらでも身につけられる
-まず、DaBのスタッフ育成のコンセプトを教えてください。
「デザインできる美容師を育てること。そのほかに、これといったコンセプトは特にありません。美容師って基本的に、お客さまの言うことを聞いちゃうというか受け身の人が多いと思うんです。例えば、医者のように何か問題を発見してあげるというよりは、どちらかというとお客さまからオーダーされたことに応えるというような。そうじゃなくて、DaBではこちらから主体的にデザインを提案できる美容師を理想としています」
-デザイン提案できる美容師を育てるために、サロンでは具体的にどんな教育をされているのでしょうか?
「しいていえば、どんどんヘアを作らせるってことぐらいですね。定期的に、自分でモデルハントしてカットして発表する場を設けているのですが、入りたてのアシスタントからトップアシスタントまで同じ条件で同時に行います」
-アシスタント歴によって、作品の完成度に大きな差が出るのでは?
「技術の面ではそうかもしれません。でも、入りたてで技術が足りなくてもデザインはできます。テクニックがあってのデザインっていう指導じゃなく、デザインあってのテクニック。この人にはこの髪型がいい、という思考を持つことがまず大事。そのうえで、思い描くヘアを最短時間で作るために必要なのがテクニックだと考えています」
-デザインできる美容師になるには、技術よりまず感性を磨くことが大事だと。
「感性って習慣によって磨かれていくと思うんです。だから、後から磨こうと思っても難しいし、身につくまでに時間がかかってしまう。その逆に、テクニックは練習次第、努力次第で後からいくらでも身につけられますから」
-澤野さんご自身は、「デザイン」するためにどんなことを「習慣」にしていらっしゃるのでしょうか?
「作り手の視点で人を“見る”こと。テレビでも本でも、眺めないで“見る”。前からみたときに後ろはどうなっているのか、切り方とか角度を見て想像する。ただ眺めていると目に映る部分しか見えないけど、目に映らないところまで見ようとしないとダメ。例えば、景色を見て『あ~キレイだな』って思うことは誰にでもできます。でも、それを写生しようと思ったら、木を見て枝が何本あるのか、あの緑色を出すにはどの絵具を混ぜ合わせたらいいいのかな、ってところまで分析する。それが“眺める”と“見る”の違いです。眺めているばかりでは、なかなかデザインする感性は身につかないと僕は思います」
-それはつまり、プライベートや趣味の時間も、常に美容師目線で過ごすということですか?
「趣味は趣味で楽しめばいいと思うんです。ただ、感性を高めるために何やってますか?って聞いたときに、『美術館に行ってます』って答えが返ってくると、『ん?何言ってるの?』ってなる。だって、それはただの趣味だから。それなら自分で描いたほうが、ずっと意味があると思う。美容師は手作業の仕事ですから、脳で刺激を受けるだけじゃなく手を動かさないとダメ。美術館で見たモナリザの世界観を、サロンに戻ってヘアで表現してみる…とか。デザインできる美容師になるためには、そういう視点が必要だと思います」